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¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
DNA糖部構造解析精密化手法の開発:DNAの溶液構造をその動的平衡を含めて正確に評価する事を目的として、徹底したスピン結合定数測定の精密化、および構造を規定することの可能なより多くのスピン結合定数を集積するためのNMR手法開発を行った。 1)糖部^1H核間スピン結合定数の精密測定:^1H核間スピン結合測定に従来よく用いられているHCCH-E.COSY法では観測感度が低く、その誤差の範囲も測定毎に変わり、NMR情報の精密化を進める上では適当な方法ではない。そこで当該年度では、HCCH-E.COSY法に変わる、より信頼のおける測定法としてJ-変調型の2次元測定法(J-mod.HSQC)をデザインしてその評価を行った。この測定法の適用に当たっては、観測対象とする^1Hスピン対を孤立させた状況にする必要があるため、すでに本研究室で確立された^<13>C/^2Hの2重標識技術を用いて^<13>C完全標識したうえでC2',C3',C5'の各位置に重水素標識(C2'では、H2"のみが^2Hと置換、C5'位では、H5',H5"のそれぞれが50%づつ^2Hに置換されている)したチミジンを調製しそれをd(CGCGAATTCGCG)_2配列のオリゴマー中のT7の位置に導入し解析対象とした。この方法では、J-結合の強さを、2Dスペクトル上のクロスピークの強度変調の様子から読みとるが、8点程度の観測点から1つのJ-値を抽出するのでノイズに対して値のぶれが小さくかつ観測誤差を正確に評価できる。この測定の結果、T7位の糖部に関してJ(H1',H2')=8.2±0.2Hzまた、J(H4',H5r')=2.7±0.2Hz、J(H4'H5s')=2.8±0.4Hzと精度よく観測できた。この結果から、糖部のコンフォメーションをO4'-endoと決めることができた。この結果は単結晶構造中に見られる2つのストランド中の構造がO4'-endoとC1'-exoであることと異なっており、溶液中の構造と結晶構造の相異を意味する。また、2つのH4',H5'間のJ-結合定数の値から、T7のγ-torsionが50°であり、結晶構造と対応していることと、実験精度の範囲でγ-torsion回りで露な構造平衡が生じていないという動的構造の面でも新たな知見を得ることがてきた。これは溶液中でのγ-torsion解析の初めての例である。 2)糖部^1H-^<13>C間結合定数の測定手法の開発:上記のような^1H核間結合定数では、糖部が2つのコンフォマ-間での平衡にあるような場合には、おのおのの状態を記述するに十分名実験値が得られない。そこで、この情報の不足を補うために、NOEによる磁化移動を利用したE.COSY型の測定をデザインし適用した。E.COSY型の測定なので観測精度は低いが、同方法を用いてほとんどすべての^1J(C,H),^2J(C,H),^3J(C,H)を測定でき、新たな構造情報として用いることができた。このように抽出された構造情報は、精度が悪いが、1つの結合角に対して多くの実験的な角度範囲を制約を与えるため得られる実権値の両を増やすことで、より精密な糖部構造の記述を可能とする。
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