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¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1996: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Research Abstract |
口腔内外の触圧感覚はヒトの咀嚼行動において重要な役割を演じているが、視覚の退化しているモグラ類においては、鼻先の触圧感覚によって食物を確認すると同時にその感覚によって咀嚼行動が誘発されることが、その行動から推定される。鼻先にはアイマ-器官が密に分布しているので、この器官の機能を解析することを本研究の重要な目標とした。 材料と方法 モグラ科のヒミズモグラUrotrichus talpoidesを主として秩父山地で採集した。標本はエーテル・ネンブタール深麻酔下でカコジレート緩衝2%グルタールアルデヒドで潅流、侵漬固定の後、酵素化学反応を施し、主として透過電顕で詳細に観察した。 反応法と結果 Adenylate cyclase(AC)(Saito et al,1992)及びGuanylate cyclase(GC)(Saito et al.1992)の反応は、特にメルケル細胞とケラチノサイトの微絨毛の形質膜及び層板小体の層板細胞の形質膜に強く陽性であった。Phosphodiesterase(PDE)(Florendo et al,1971)はアイマ-器官の下部のケラチノサイトの形質膜及びメルケル細胞の微絨毛と偽足様突起の形質膜の細胞質側に明瞭な所見を認めた。Ca-ATPase(Ando et al,1981)の活性はアイマ-器管内の表皮細胞とメルケル細胞の両者のゴルジ装置、r-ERと核膜槽内に陽性で、メルケル細胞の神経終末と表皮内の棚状終末のs-ER、層板小体の形質膜にも顕著であった。5'-nucleotidase(5'N)(Wachstein and Meisel,1957)は特に層板小体の形質膜の外側に陽性、Glucose-6-phosphatase(G6P)(Wachstein and Meisei,1956)はメルケル細胞と表皮細胞の核膜槽及びメルケル細胞r-ERとゴルジ装置の槽内に陽性であった。 考察 AC,GC,PDEがメルケル細胞・ケラチノサイト及び層板小体の原形質膜に陽性であったことはアイマ-器官の中のそれらの部位でサイクリックヌクレオタイドが二次情報伝達物質として機能していることを示し、またCa-ATPase,G6P及び5'Nの反応はエネルギー代謝及び糖代謝が盛んに行われていることを示す。すなわちアイマ-器官の感覚機構が特に層板小体とメルケル細胞を主体に器官下部において活発に機能していることが示唆された。
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