Research Abstract |
ヒトの視覚系が周囲と異なる特徴を検出する機能について,心理実験を行った.(1)従来の研究は,周囲と異なる特徴が複数提示されるような条件で,そのような異種特徴を検出するときには,特徴の個数を判断するときの成績は異種特徴の個数に依存しないが,特徴を固定するときの成績はそれら異種特徴の個数に依存することを示している.しかし本研究の実験の結果は,それらの結果と全く逆であり,個数の判断は異種特徴の個数が多くなれば困難になり,同定は異種特徴の個数が多くなっても困難にはならないというものであった.従来の研究で用いられてきた特徴は,方位のみであるのに対し,本研究では,方位だけでなく空間周波数も用いたので,本研究の結果は従来の結果よりも確実性が高いと考えられる.(2)従来,垂直線分の中の傾斜線分は,その逆の,傾斜線分の中の垂直線分よりも,検出しやすいことが知られている.こういった特徴検出の性能と,検出器の精度との関係を調べるため,周囲の線分の方位に雑音を加える条件で,特定方位の線分を検出する実験を行った.その結果,垂直線分の中の傾斜線分も,傾斜線分の中の垂直線分も,同様に雑音の影響を受けて検出性能は劣化し,かつその劣化の程度も量的に等しかった.(3)この,検出性能と精度の関係を調べるため,本研究の中心課題である,円柱レンズ装着による人工的屈折異常の条件を設定した.その結果,検出性能と精度の関係を示す,予備的なデータを得ることができた.しかし,上述のように,検出性能は特徴の個数に依存するので,個数による変動を解消する必要がでてきた.これは今後の課題である.
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