Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本研究は、従来等閑視されてきた甲骨資料の物質資料としての側面に注目し、(1)考古学的データの確認と分析、(2)理化学的分析による年代・充填色素の研究、(3)顕微鏡実測及びコンピュータ処理による鑽鑿法・刻字法の研究、(4)外字・甲骨原字のコンピュータ処理法の確立、を目指した。(1)については、まず甲骨拓本画像のデータベース化を進めた。その過程で、異なる著録に重載されている資料を正確に識別する必要が生じたため、独自にプログラムを組んでヒストグラム比較による識別を試みた。完成したプログラムは所期の性能を満たしたが、これに多大な労力を要したため、データベースを期間内に完成させることはできなかった。(2)・(3)は、当初から資料が整い次第作業を開始できる体制ができていたが、大前提となる(1)の作業の遅延により、若干の予備的実験を行えたに留まった。幸い関係機関からは引き続き協力を得られる見通しであるので、全面的な展開は今後に期したい。(4)については、作業の前提となる甲骨原字の文字域の検討を進め、3年間で計7本(本年中に出版予定の物1本を含む)の論文を発表したが、なお完結には至っていない。外字・甲骨原字の電子化については、文字鏡研究会より既刊の『今昔文字鏡』CD-ROM中への収載計画に参画を求められ、これと合同することとなった。本年1月には収載第一弾として、代表例約3500字を収めた新訂版が刊行され、一定の成果を上げることができた。今後も同会と共同で電子化作業を継続してゆく。本研究は前例のない試みを多数含んでいたため、予想外の問題が多発し、期間内に当初の目的を完全に達成することはできなかった。しかし3年間の研究を通じて、停滞していた甲骨研究の現状を新たなアプローチで打開する目処が立ち、今後の研究の道筋を明確にすることができた。末尾ながら記して感謝申し上げます。
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