Research Abstract |
炭酸ジメチルは,ポリカーボネートや医農薬原料,ガソリンのオクタン価向上剤などの種々の用途があり,特に近年は環境問題からホスゲン・ジメチル硫酸・塩化メチルの代替品として注目されているが,現状では主としてメタノールとホスゲンとの反応によって製造されている。本研究は,Ru(II)-Su(II)異核クラスター触媒の特性を生かしたメタノール脱水素反応の生成物選択性の観点から,特に炭酸ジメチル生成に有利となる反応条件を検討した。 メタノールのみを原料として一段で酢酸(または,メタノールとの速いエステル化による酢酸メチル)を生成する反応では,律速段階がメタノールのホルムアルデヒドへの脱水素過程にあり,Ru(II)に隣接するSn(II)活性中心は,メチルホルマト錯体中間体のヒドリドアセタト錯体中間体への異性化を促進すると推定された。また,この異性化過程は,メチルホルマト錯体中間体からのギ酸メチルの還元的脱離過程と競争的である。 炭酸ジメチル生成は,(i)上記のように生成したギ酸メチルの酸化的付加,(ii)メトキシドイオンの配位,(iii)炭酸ジメチルの還元的脱離,の経路により進むと考えられることから,メトキシドイオンの生成を促進する塩基性担体を試みた。すなわち,Gs^+イオン交換Y型ゼオライトおよび層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)を担体として,それぞれスーパーケージ内および層間に調製したRu(II)-Sn(II)異核クラスター種を触媒とするメタノール転化反応を行った。しかしながら,いずれの場合も炭酸ジメチル生成活性は,ほとんど認められなかった。また,活性炭担持金属ルテニウムを四塩化スズにより修飾した固気相不均一触媒では,ギ酸メチルが主生成物となった。
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