Research Abstract |
安全という指標は、対象のシステムを排除しない限り、事故ゼロということを理論的に証明することが困難であるため,それ自体では際限のない目標となる。従って,システムの現状を的確に把握し,適切な安全目標を設定することは非常に重要な意味を持つことになる。一方,安全目標を持つことの意味の一つとして,その値を用いて社会受容,即ち,パブリックアクセプタンスを得るということがあるが,「安心」は人間のこころの問題に関与するため,その定量的な把握は容易ではない。 本研究では,技術システムに関し,(1)安全目標の設定,および(2)パブリックアクセプタンスの検討から成っている。ここでの安全目標とは,「システムが達成すべき安全水準を定量的な指標を用いて表現したもの」と定義した。まず、前者に対しては,事例の調査,収集を行い,各種の定量的リスク評価モデル,これらに基づくソフトウェアの調査を実施した。ここでは現在この分野の世界標準と認知されている,オランダ応用科学研究所(TNO)で開発されたモデルとソフトウェアを用いて既存の手法の把握を行い,問題点の抽出を行った。 次に,化学プラントにおける事故事例の中から,典型的なものをいくつか選択し,従来法によるリスク評価と実施すると同時に,FTA,FMEA,HAZOPを組み合わせた新たな事故シナリオ分析を構築し,従来法では評価し得ない部分についての検討を行った。 最後に,プラントの管理者,現場の従業員,周辺住民および直接関係のない人々に対し,「周辺住民は何を不安に思っているか」について,アンケート調査を実施し,この結果を階層分析法により整理し,立場の異なる人々の意識のずれについて定量的に把握し,要因の分析を行うことにより,化学プラントの存在がパブリックアクセプタンスを得るために,いかなる努力をし,安全目標の設定を行えばよいかについて検討を行った。
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