Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1996: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
我々はHIVプロテアーゼの基質遷移状態概念に基づいて,選択性が高く活性の強いHIVプロテアーゼ阻害剤(KNI-272)をデザインし合成することに成功した.その低毒性,酵素特異性により,理想的な抗エイズ薬として期待されているものの薬剤耐性HIVの出現はエイズ克服の難しさを示している.そのような状況において,変異プロテアーゼと阻害剤の相互作用の解析の結果,基質との相互作用の低下も推測され,酵素機能低下が変異ウイルスの病原性の低下をもたらすのではないかという着想に至った.この推論は,HIV感染後長期末発症現象の原因の一つとして弱毒ウイルス説を提起し,HIVと人類の共生の可能性を示唆するものである. そこで薬剤耐性ウイルスの分子構造解析を行い,変異酵素・抗エイズ薬複合体との構造に基づいて,変異HIVプロテアーゼと基質との相互作用の低下と酵素活性の関係を検討し,さらに酵素活性とウイルス病原性の因果関係を検討した.変異HIVおよびHIV-2においては,それらのプロテアーゼの酵素活性は低く,更にウイルスの感染性や病原性が低いという報告もある.これらのことは,低酵素活性が感染性低下のひとつの原因と見なすことができ,ウイルス病原性分子機構解明へ酵素の化学構造レベルからのアプローチを行い,HIVと人類の共生の可能性探究を目指した. 我々が開発し,現在米国NIHで臨床研究を進めているキノスタチン(KNI)-272に対する感受性低下ウイルスを同定し,そのプロテアーゼのアミノ酸配列に基づいて変異酵素を合成した.この変異酵素と抗エイズ薬との相互作用を解析し活性型コンフォメーションを考察し,さらに変異HIVプロテアーゼの酵素活性と感染性との関連性について検討した. 相互作用解析に基づいて,抗エイズ薬を分子設計し合成を行い抗ウイルス作用の測定を行った.これらの相互作用に関与する構造の必須部分を解析し,耐性,副作用のない抗エイズ薬の開発をめざした.また,変異HIVプロテアーゼ・抗エイズ薬複合体の構造解析を行った.
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