核膜は酵母(Saccharomyces cerevisiae)から以下の通り調製した。Saccharomyces cerevisiaeを培養後、集菌し、酵素処理によりSpheroplast化し、それをFicollを用いて再度集めた。ホモジナイザーによりSpheroplastを破砕し、蔗糖密度勾配遠心により核を回収し、DNaseで処理後蔗糖密度勾配にかけ核膜を得た。得られた核膜は抗lamin B receptor抗体によるイムノブロットから内膜を有し、かつprepro α Factorを透過させるタンパク質膜透過能を有することから外膜を有すること、つまり内外膜が共存していることが確認された。この核膜画分は蔗糖密度勾配上、signal peakを呈した。 この核膜画分をFrench pressにより破砕し、それを蔗糖密度勾配遠心にかけ分画を試みたところ、内外膜が共存しているpeakに加え、外膜を主要成分とする画分と内膜を主要成分とする画分とが識別された。しかし外膜及び内膜の画分の収率が低値と、各画分の分離が不十分という二つの問題点が存在する。現在French press処理の段階について加圧の程度及びその際の緩衡液の組成について検討中であり、超音波処理も検討している。分離を向上させるためには蔗糖密度の条件を検討中であるが、沈降法に加え浮遊法も試みている。さらに蔗糖以外による密度勾配も検討中である。より混在物の少ない外膜画分を得る方法として、外膜にはライボソーム結合能が存在することに着目して、French press処理後の試料に酵母から調製したライボソーム画分を加え、この存在下で蔗糖密度勾配遠心を行い、ライボソーム結合により重い画分に移行した膜成分を得た。これから高塩濃度処理によりライボソームを除去し、極めて純度が高い外膜を得ることに成功した。
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