Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
生体には個体としての恒常性を維持するために様々な防御機構が存在している。本研究は、この生体防御機構において中心的な役割を担っている白血球の一つである好中球の機能を調節する内因性因子を単離、好中球の関与する生体防御機構を明らかにすることを目的とし、ブタ心臓より好中球活性化ペプチドの精製を行なってきた。その結果、異なる10種のペプチド性好中球活性化物質を単離しその構造解析を行ない、7種のペプチドの構造を決定、また1種についてその配列を決定した。これらはすべて既知のタンパク質の断片であった。さらに単離したペプチドのうちブタcytochrome coxidase subunit VIIIのC末端22残基と考えられるペプチドCOSP-1、およびcytochromebのN末端15残基のペプチド、fCytb(1-15)についてはこれらを化学合成し、合成ペプチドを用いて実際ヒト好中球を活性化すること確認し、ざらにCOSP-1がGiあるいはGo型GTP結合調節タンパク質を直接活性化することを見いだした。これらの結果は、細胞が死にいたる、あるいは大きな傷害を被ったとき、cytochrome coxidaseやcytochrome bのような普段は細胞外に放出されることのないタンパク質が漏出、それが細胞外に存在する分解酵素によって分解、あるいは細胞内で分解、放出されることによって好中球活性化因子となり、これに向かって好中球が遊走し活性化され異物となった死細胞を処理するという生体防御系が存在する可能性を示すとともに、この機構の少なくとも一部は断片化ペプチドによるGタンパク質の直接的活性化が関与しているのではないかと考えられた。今後アポトーシスあるいはネクローシスを起こした細胞が実際にこのようなタンパク質を細胞外に放出しているかどうか検討する必要がある。
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