Project/Area Number |
09044068
|
Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Joint Research |
Research Field |
生態
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
辻 瑞樹 富山大学, 理学部, 助手 (20222135)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHRISTIAN Pe フランス国立科学研究センター, 上級研究員
JURGEN Heinz エルランゲン, ニュールンベルク大学・動物学第1講座, 教授
BERT Holldob ビュルツブルク大学, テオドルポフェリ生物学研究センター, 教授
山内 克典 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30021322)
浜口 京子 森林総合研究所, 昆虫生理, 研究員
|
Project Period (FY) |
1997 – 1998
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
|
Budget Amount *help |
¥4,800,000 (Direct Cost: ¥4,800,000)
Fiscal Year 1998: ¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 1997: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
|
Keywords | コミュニケーション / 社会性昆虫 / アリ / 道化 / 血縁淘汰 / フェロモン / 体表炭化水素 / ポリシング / 社会行動 / 利他性 / 炭化水素 / 進化生態学 |
Research Abstract |
進化生態学の理論によれば、アリなどの社会性昆虫のコロニー内にも様々な利害対立が生じ得ることが予測されている。我々は本共同研究において,コロニー内の共同的側面で個体間情報伝達が行われているのと同様に,対立的な局面でも様々なコミュニケーションが使われているのではないかとの見地に立ち,その機構の総合的(単に物質的基盤だけでなく,なぜそれが進化したのかそのメカニズムの解明も目指すという意味で)解明を目指した。主に東南アジア産のアリ類を用いて研究を展開したが,本共同研究で得られた最大の発見のひとつは,ハリアリの数種で,繁殖に関する地位(繁殖者いわゆる女王か,非繁殖者すなわちワーカーであるか)を巣の仲間に伝える難揮発性の炭化水素成分がアリの体表に存在することが明らかになったことである。さらに本年度には、沖縄産のトゲオオハリアリにおいてその物質が同定された。これまでアリでは女王物質(ワーカーの産卵を抑制するフェロモン)は同定されていなかったが、これらの炭化水素がおそらく女王物質であり、理論的考察からその機能は女王の存在をワーカーに知らせる単なる信号で,以前考えられていたようにワーカーをコントロールする武器ではないことが示唆された。本種トゲオオハリオアリに関しては、交尾行動やワーカー間の順位行動など、様々な局面で使われる情報伝達機構について詳細に研究した。結果、単女王制単婚性の社会性膜翅目で初めてワーカーによる産卵行動の相互ポリシングが存在することが明らかになった他、かねてよりの焦点であった、トゲオオハリアリ属に特異的な器官である翅芽痕の外分泌腺分泌物の機能も解明された。それは、予想されていた性誘引物質や女王物質ではなく、ワーカーが自らの繁殖の機会を奪う自己犠牲的なフエロモンであると判明した。化学分析は現在進行中であるが、理論的考察からこのような一見自虐的に見えるようなフェロモンの発達も、包括適応度を向上のためには望ましい女王の健康状態やポリシング能力を探るための手段であり、フェロモンは正直なシグナルである可能性が考えられた。本研究では、アリのコロニー内には自身の繁殖の機会を向上させるような情報伝達行動と同時に繁殖の機会を奪うようなアンビバレンツな情報伝達があることが判明した。これらの知見は、アリの社会における包括適応度の間接的な利益と、自身の繁殖による直接の利益の相対的な重要性の解明に大きく貢献するであろう。
|