Project/Area Number |
09203202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
中村 裕 秋田大学, 教育学部, 助教授 (30237424)
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Project Period (FY) |
1997
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1997)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1997: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 権威主義 / ロシアナショナリズム / 大国主義 / リベアリズム / 利益政治 / 体制転換 |
Research Abstract |
平成9年度は、ロシアについて語る際に不可欠の際にキ-概念とされて来た大国主義、メシア意識、更にはアンドラニク・ミグラニャンの議論によっても補強されている権威主義論がどれだけ有効なものであるか検証するべき時期に来ているとの問題意識を持って、エリツィン再選後のロシアの政治状況を分析した。エリツィン再選後の状況については『大統領選後のロシアの政治状況』(「スラブ・ユーラシアの変動」領域研究報告輯No28)のなかで明らかにしたが、そこでは選挙においては特定の政党、政治勢力を超越した全国民敵大統領のイメージを強調したエリツィンに対して、首相チェルノムィルヂンの運動体「我々の家-ロシア」からも大統領独走の傾向を牽制しようとする議論が見られたこと、またロシア連邦共産党の陣営においては、ジュガ-ノフら指導部は原則主義者の反発にも関わらず階級闘争路線から転換してロシアにおける二大政党制の確立の展望の上に立って広範な愛国派勢力の中核として自党を位置づけることに踏み切ったことを明らかにした。また、大統領派と反対派の双方が重視した知事選挙においてはイデオロギー論争、体制選択論争の意味合いは希薄化し、パイの分配という利益政治の様相が強くなっていることを指摘した。その上で、権威主義義的統治、カリスマ的指導者の可能性、有効性に関しては今日ロシア人自身の間で議論の対象とされていることを指摘し、その内容を紹介した。 更に、大統領の権威主義的政治プラステクノクラートによる経済的リベラリズムの方式の可能性については1998年3月段階では不定的に語らなくてはならない事情に関しては「体制転換の現局面-権威主義機能不全のロシア」(『新防衛論集』、1998-No3に掲載予定)で分析した。1997年春以降の政治過程を中心に分析したその論文のなかでは大統領陣営、反対派のある意味での強い秩序感覚、濃厚なエリート主義にも関わらず、エリート自身の内部分裂がそれをはばんでおり、その意味で多元主義・民主主義の方向に否応なく向かっているのが今日のロシアの姿であることを明らかにした。 平成8年度、9年度の2年間ロシアの政治過程とイデオロギー状況の分析を試みたが、イデオロギーに関しては改革派のリベラリズム対反対派の共産主義プラスロシア大国主義の二元的対立の構図から権威主義もリベラリズムも機能不全のまま、ソフトな大国主義の枠組みのなかで体制側、反対派が新たな自らの正統性を模索している段階にあると暫定的に結論づけることができる。
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