高分子の結晶化過程を分子レベルから眺める:常識とされてきたイメージの実験的検証
Project/Area Number |
09212221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田代 孝二 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60171691)
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Project Period (FY) |
1997
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1997)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | ポリエチレン / 等温結晶化 / 不規則-規則転移 / 赤外スぺクトル / X線散乱 / コンフォーメーション / 斜方晶 / 六方晶 |
Research Abstract |
高分子物質は、極めて複雑に結晶相、非晶相が集まり、高次組織を形成している。どのようなプロセスでランダムコイルの溶融状態が、規則的なラメラ構造の形成へつながっていくのか?どれぐらいの速さで、そのような変化が起こるのか?これらの疑問に対し、これまで分子レベルからの解明がなされてこなかった。本研究は溶融状態からの等温結晶化過程における構造変化を赤外およびX線の時間分解測定を通じて明らかにし、高分子結晶化機構の本質を分子レベルから探ることを目的としたものである。 試料としては最も基本的で重要なポリエチレンを用いた。実験は、溶融状態から所定の結晶化温度(Tc)まで試料温度を瞬間に変え、この一定のTcにおいて時間とともに起こる結晶化挙動を追跡していく、いわゆる温度ジャンプ法に基づいて行った。等温結晶化過程における赤外スペクトルの時間変化を眺めると、温度ジャンプ直後にポリエチレン六方晶型に特有な(比較的短いトランス連鎖がゴ-シュ結合でつながり全体として乱れている)いわゆるdisordered trans形態特有のバンドが生じ、その強度を増加させた。このバンドの強度が再び減りはじめるころから、斜方晶型に特有なRegular Transバンドが強度を強めはじめた。赤外スペクトルの測定と平行して小角X線散乱の時間分解測定を、やはり温度ジャンプの過程で行った。(高エネルギー物理学研究所、フォトンファクトリー)。 これらのデータから次のような構造変化が浮かびあがってくる。まず、溶融状態の中に比較的長い、しかしコンフォーメーション的に乱れたトランス連鎖の量が増える。温度ジャンプ後に、このdisordered trans連鎖の量がさらに急増し、乱れた内部構造の孤立ラメラが出現する。時間がたつと、この乱れた相は規則的な斜方晶型構造へ転移し、ラメラの厚さも増してくる。さらに時間がたつと、ラメラ同士が積層構造を作り、X線小角散乱に長周期に基づく信号が観測されるようになる。そして、内部構造がより緻密な分子鎖パッキングをするとともに、ラメラの間に新たにラメラが生じ、見かけの長周期が次第に短くなっていく。この機構は極めて自然な(ある意味で常識的な)描像ではあるが、しかし、この何でもないイメージがこれまで実験的にきっちり証明されてこなかったことに、我々は意外性を感じている。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)