分子歪みが誘起する新たな結晶素構造と固体物性に関する研究
Project/Area Number |
09217224
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
水口 仁 横浜国立大学, 工学部・知能物理工学科, 教授 (90281005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 裕之 横浜国立大学, 教育人間科学部, 講師 (30213763)
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Project Period (FY) |
1997
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1997)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 1997: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Keywords | 有機顔料 / 電子スペクトル / 結晶構造 / 相転移 / X線回折 / 赤外線吸収スペクトル / ラマンスペクトル |
Research Abstract |
同じ分子から構成される固体であっても、分子配列の違いにより固体の光学的性質が大きく異なる事がある。近赤外吸収(GaAsAlレーザーの発振波長)を有するチタニルフタロシアニンやチオピロロピロールはこの典型的な例である。本研究では、分子がペアをなす新規な素構造("レンガ塀のレンガ"構造)が如何に形成されるかという問題と、この構造を取ると何故、近赤外域が出現するかと言う2点を検討課題とした。その結果、結晶の構成分子が対称中心を持つ場合でも、励起準位が縮退しているか否かにより分子歪みの効果が大きく異なる事がわかった。 構成分子が対称中心をもち、しかも励起状態が2重に縮退しているチタニルフタロシアニンでは、溶液から固体に移行する際に分子の歪みが起こり、対称性が降下(C_<4V>→C_1)する。出現した双極子モーメントにより分子はペア構造をとり、"レンガ塀のレンガ"のように積層する事が判った。この時、2重に縮退していた励起準位は分子歪みにより大きく分裂し、短波長側と長波長側に2つのバンドを与える。長波長のバンドが近赤外吸収に相当する。 分子の励起準位が縮退していない例はチオピロロピロールである。この場合も先と同様に、分子歪み(C_i→C_2)が双極子モーメントを誘起して、"レンガ塀のレンガ"構造が形成される。分子がこのような配列を取ると、遷移モーメント間の相互作用(励起子結合効果)が長波長シフトに有利に作用し、光学吸収が近赤外域まで延びる事が明らかになった。 以上の結果から、分子の結晶化に伴う分子歪みは"レンガ塀のレンガ"構造の形成には不可欠であり、出現する双極子モーメントが素構造の駆動力と考えられる。また、近赤外吸収の機構には縮退準位の分裂によるものと励起子結合に基づく2つのメカニズムがある事がわかった。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)