Research Abstract |
太陽系外宇宙からの物質を直接入手して調べた例はなく,また太陽系はその形成後に物質の出入りに関して閉じているかどうかの証拠は高エネルギー宇宙線以外には知られていない。1971年にD.C.Hoffmannらがカリフォルニア産バストネス石から見い出した^<244>Puは,超新星での合成後に太陽系外起源の宇宙塵に取り込まれて地球に流入した可能性が高い(坂本,1974)。 本研究では,この探索のためにハワイ沖水深5,000mの海底からドレッジ採取した約80kgの堆積物からマンガン団塊を除去後,水洗・風燥・粉砕して13kgの乾燥試料を得た。この中,31gずつ分取し,1gは核実験起源^<239,244>Pu分析用,30gは^<244>Pu測定用として,それぞれ4倍量のNaOHで400℃で15時間熔融し,温水侵出を行ってAl等を除去,残留水酸化物はHClに溶解し,Siを除いた。この操作の34回分(30×34g)を1つとして,IPE抽出,塩酸系及び硝酸系の陰イオン交換によりPuを精製分離後電着し,α線スペクトロメトリを行った。1g分については^<242>Puを定量トレーサとして同様の処理・測定により^<239,244>Pu(33±3)muBq/gを得た。この値は,この海域での堆積物中のフォールアウト^<239,244>Puの測定値(中西他,1997)と矛盾しない。しかし、主試料のPuスペクトルから、化学収率30%(^<239,244>Puが収率トレーサ)で,かつTh同位体の除去が不完全であることが分かった。この低収率・不完全精製の原因を詳しく実験的に検討し,Fe(II)によるPu(VI)→Pu(IV)への還元,ゼラチン状Si分のHCl洗浄の徹底を加えたところ30g毎の試料では65〜98%の収率で,不純物のない試料を得た。この方法を再度1kg試料に適用したところ純度の高いPu試料を得て,α測定21日間の現在,^<244>Puの推定期待値11muBq(4×10^9原子)/kgに対して上限値32muBq/kgを得ている。しかし,化学収率は40%で,硝酸系イオン交換操作に問題が残った。因に,対応する^<239,244>Puは(43±7)muBq/gであった。 一方,53gの堆積物試料を遂次溶解法により,炭酸塩分,Fe・Mn水和酸化物,有機物及びケイ酸塩分に分別し,それぞれのXRFによる主要元素分析と^<239,244>Puの定量を行った。Pu分配は21,27,11及び40%で特別の局在は見えないが,宇宙塵起源物質はケイ酸塩分の可能性が高い。 今後は,α測定をベースに大量処理における収率改良と分別処理を続けることで,検出上限を下げ,有意の値に迫ると共に,十分の処理量を達成した後に最終的には質量分析(準備中)を行う予定である。
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