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¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
銀河系内ブラックホール候補天体に存在すると考えられる高エネルギープラズマ中の電子の分布関数と放射スペクトルについて研究を行った.ブラックホール近傍では様々な粒子加速機構が働くと考えられるが,この研究ではプラズマ波(fast mode waves)によって電子が加速されると仮定した.電子は加速される一方,放射によってエネルギーを失うため,電子の得るエネルギーには上限が存在する.そこで電子の分布関数と放射スペクトルを決定するため,以下のような物理過程を考慮した.プラズマ中で磁気乱流が生じ電子はプラズマ波によって加速される.このプラズマ波による粒子加速を拡散方程式により取り扱う.このとき粒子の冷却過程として,粒子どうしのクーロン散乱と放射を取り入れる.放射過程としてはシンクロトロン放射とコンプトン散乱があ.コンプトン散乱される光子の源としては,外部からの低エネルギー光子の供給や内部でつくられたシンクロトロン光子が考えられる.このとき光子のスペクトルは光子のエネルギー空間の輸送方程式を解くことによって求められる.以上の過程を取り入れ,プラズマ波,電子,光子の分布関数を記述する3つの方程式を求めた.そしてこれらを同時に数値的に解き,電子がブラックホール近傍の環境で有効に加速されることを示した.また観測によってこのモデルを検証するため,ブラックホール候補天体のひとつであるGROJ1655-40からのガンマ線スペクトルをこのモデルから得られたスペクトルと比較し,この天体の物理状態を示すパラメータ(系のサイズ,磁場の強さなど)を求めた.この天体の場合,ブラックホールの質量は太陽質量の7倍であり,プラズマ雲の典型的な大きさが400km,トムソン散乱に対する厚さが0.1,磁場の強さが3百万ガウス程度のとき,観測されるガンマ線をこのモデルで説明できることがわかった.
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