| Research Abstract |
当研究の目的は,通常の摂動展開の情報を用いて量子トンネリングの定量的評価を行う方法の定式化と応用である.量子トンネル効果に対するこの角度からのアプローチとして,我々は従来ODMと呼ばれる一種の変分法的方法を研究していたが,この方法は弱結合の領域で基本的困難を持っていることが我々の研究から明らかになった.そこで当年度は少し違った角度からのアプローチとして,いわゆるボレル和の方法を一般化することで摂動級数の情報からトンネル振幅を取り出す方法を定式化した.我々のこの定式化は,トンネル現象と摂動級数の高次の振舞いとの関連に基礎を置いている.つまり,従来よりトンネル効果は摂動級数のボレル変換に特異点を生み出す事が知られていたので,実際の摂動級数から(近似的に)ボレル特異点を再現し,その情報からトンネル確率を評価しようというものである。我々は,この定式化を簡単な一次元の量子力学系に応用し,その有用性をテストした.その結果,この系に対しては,摂動級数の情報だけから非常に高い精度で正しいトンネル振幅を再現できることが明らかになった.この正確な値との一致は弱結合の領域から強結合の領域までにわたっており,通常トンネル現象に対して用いられるWKB近似を系統的に改善する事ができた.これは特に強結合の領域ではトンネル効果に対する系統的な解析的近似法が存在しなかった事を考えると,驚くべき結果と言える.我々はこの方法の場の量子論でのテストとして1+1次元での真空が準安定なスカラー場の理論で,真空のエネルギー密度を5ループまで実際に計算し,我々の方法の収束性を調べた.残念ながら,摂動級数の次数が短いためにはっきりした結論は今の所得られていない.しかし高次の輻射補正の計算が比較的容易なd次元(0【less than or equal】d【less than or equal】4)のGaussian propagator模型で同様の解析を行った結果は,我々の定式化が比較的良い
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