Research Abstract |
超塑性発現の一つの目安としてしばしば歪速度感受性指数m≧0.3が挙げられる.微細結晶粒材料では粒界すべり(m=0.5)が主要な高温変形機構となるため,この条件が満たされ,超塑性が発現することは周知の通りである.他方,高温変形がsolute dragにより支配されるいわゆるClassl型(クリープの応力指数n=3)の合金に関するAl-Mg固溶体やAl-Cu固溶体では,結晶粒径-歪速度で表した変形機構図に見るように,結晶粒が微細でなくても(極端な場合単結晶でも)m=1/n=0.33>0.3となるので,実際の金属成形で期待される300%以上の伸びが得られるのではないか. このような観点から,本研究では比較的高濃度の溶質原子を含み,かつ粒界すべりの寄与を無視し得るほどの粗大な結晶粒からなるAl-Cu合金について,超塑性発現の可能性を検討した.その結果,ClassI型挙動が現れる変形条件下で400%を超える超塑性伸びを示すことが判明したので,以下にその特徴と変形機構について考察した結果を報告する. 供試材は99.99%Alおよび99.9%Cu地金より溶製されたAl-4.5mass%Cu合金で,化学組成はCu4.54,Si0.016,Fe0.010,Mg0.004,Zn0.004,残部Alである(単位mass%).引張試験片の製造工程は,地金溶解→水平加熱鋳型式連続鋳造(いわゆるOCC法)→均質化処理(833,7.2ks)→切削加工(ゲージ部長さ10mm,太さ4m,R部付き)→ゲージ部の歪取り電解研磨である.これらをインストロン型試験機による定速引張試験に供した.温度範囲は673〜821K(0.73〜0.90Tm),歪速度範囲は1.0×10^<-1>〜1.0×10^<-4>s^<-1>である.組織観察は光学顕微鏡と走査型顕微鏡によった.供試材の結晶粒は軸方向に異常に長いため,粒界に働くせん断応力は事実上0である.結果は以下のように要約される. (1)773K上の温度域で超塑性が認められる.公称応力一公称歪曲線は初期のピークを経て単調に減少し,針状に尖って破談に至る.しかし,真応力はほぼ一定値を示した. (2)最大伸びは,α単相域の833Kで460%,,821Kで444%,803Kで321%である.しかし,(α+θ)共存域の673Kでは14%に激減した. (3)m値は単相域で0.3〜0.4である.温度とともに漸増傾向がある. (4)超塑性変形域ではすべり変形が一様でSEMでもすべり帯は観察されない. (5)粒界すべりの痕跡は認められない. (6)粒内変形の寄与の大きさを示す先在ボイドの伸張が認められた.
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