Research Abstract |
[目的]宇宙・航空機用あるいは高効率を目標とする各種エンジン用の新しい耐熱構造材料として,現在,もっとも有力な候補材の一つにTi-Al系金属間化合物のTiAl合金(L1_0型,γ相)がある.しかし,この材料は耐酸化性が必ずしも十分でなく,耐酸化処理を施さなければ高温での使用は700℃が限界と言われている.一方,Ti-Al-X(X=Cr,Mnなど)系でみられるL1_2型Al_3Ti基合金は耐酸化特性がきわめて優れており,およそ1000℃まで使用可能と考えられる.また最近,Al_3TiにCrあるいはMnを多量(13〜16at%)に添加したL1_2型合金は,比較的良好な組織と延性を示すことがわかってきた.さらに,Ti-Al-X系におけるL1_0型およびL12型合金は互いに安定相として平衡して存在できるだけでなく,両相はきわめて類似した結晶構造と格子定数を有している.したがって,L1_2型合金をTiAl合金に対する耐酸化性の皮膜として使用できると考えられる.しかし,TiAl合金とL1_2型Al_3Ti基合金の間には熱膨張係数の違いをはじめ,各種機能(材料特性)に相違があるためこの二相間をさらに傾斜化させることが必要である。申請者らは,Ti-Al-Cr系におけるL1_0型およびL1_2型合金の相平衡関係を明らかにし,両相からなる拡散対を作製して接合状態および拡散層を詳細に調べたところ,組成および組織が良好に傾斜化することを明らかにした.そこで本研究では,拡散皮膜とすることがもっとも有効であると考え,種々の方法で被覆(コーティング)処理ならびに拡散処理を行って耐酸化性の傾斜化皮膜について検討した. [方法]Ti_<52>Cr_5Al_<43>組成(at%)のTiAl合金(α_2相とβ相を少し含む)を基盤材料として,Ti_<25>Cr_<14>Al_<61>組成(L1_2型合金組成)が目標となるように蒸着法および粉末パック法により皮膜を作製した.前者では蒸着後に拡散処理を施して皮膜を傾斜化させた.一方,後者では各種粉末(各元素粉末,合金粉末,Al_2O_3粉末,Cr_2O_3粉末,NH_4Cl粉末など)を種々の割合で配合したパック材を用い,真空中あるいはAr雰囲気中でコーティング処理を行った. [結果]現在,粉末パック法によりL1_2相の拡散皮膜を形成させることに成功した.この方法では合金粉末をパック材としており,したがって,合金粉末と基盤との拡散,すなわち表面拡散が重要な役割を果たしているとが考えられる.被覆層(拡散層)の組成および組織の傾斜化は現在調査中である.蒸着法によっても拡散皮膜の形成は可能と考えられ,検討中である。
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