Research Abstract |
シス-エテンジチオレートのナトリウム塩を高希釈条件下でヨウ素を用いて酸化したところ,1,2,5,6-テトラチオシン1,ビシクロ三量体2および環状四量体3が得られた。また,メトキシカルボニル基を有するチタノセンジチオレン錯体を塩化スルフリルで酸化することにより,1,2-ジチエット4,1,2,5,6,-テトラチオシン誘導体5および16員環化合物6を得ることができた。生成物1,2,3,4,5の分子構造はX線結晶構造解析によって明らかにした。その結果,1および5は結晶状態でtwist型をとっていることがわかった。これらの実験結果は,1および5にはtwist型,chair型およびhalfchair型の三つのコンホ-マ-があり,その中でtwist型が最も安定である,という分子軌道法を用いた計算(MP2/D95^*)結果と一致した。また,ジチエット4の四員環はほぼ平面であり,16員環化合物3は分子内に空間を持つかご型構造をとっていることが明らかになった。 テトラチオシン1はp-キシレン還流下でも安定であるが,アセトニトリル中では容易に二量化し16員環化合物3を与えた。ジチエット4は結晶状態では安定であったが,アセトニトリルあるいはクロロホルムなどの溶液中では環拡大が起こりテトラチオシン誘導体5および16員環化合物6を与えた。しかし,5はこれらの条件下では安定であり,1とは異なった挙動を示した。このことから,4は5を経由しないで6を生成することがわかった。テトラチオシン1のベンゼン溶液にパイレックスフィルターを通して光照射を行うと,2,3,6-トリチア-4-シクロヘキセニルチオアルデヒドが反応性中間体として選択的に生成していることがわかった。
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