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¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
本年度の研究は、近年当研究室で合成され、極めて特異な構造および電子状態を有するS_4ロジウム四核体[{Rh_2Cp^*_2(μ-CH_2)_2}_2(μ_4-S_4)](OH)Cl(1)(Cp^*=η^5-C_5Me_5)の化学的挙動を検討する一環として,還元剤との反応を行った。錯体1が二つに切れた形を有するμ-S_2錯体[Rh_2Cp^*_2(μ-CH_2)_2(μ-S_2)](2)を生成することを見いだした。この錯体2は通常のジスルフィド結合を有する金属錯体とは異なり,酸素に対して非常に高い反応性を示し,種々の低次酸化物を与えることが判明した。また,過酸化物を用いた酸化反応では高次酸化物を与えることも見いだした。これらの酸化物の中には,通常,非常に不安定な化学種であるα-ジスルホキシド類似体やα-ジスルホン類似体も比較的安定に単離され,ロジウム二核錯体上のS_2配位子が特異な環境にあることが明かとなった。そこで,錯体2の電子的特性を明らかにするために,錯体1の電気化学的挙動の検討を行ったところ,錯体1は酸化側の電位走査に対しては変化を見せず,高い抗酸化性を示すが,還元側に対しては錯体2の生成と考えられる不可逆な還元波を-1.03Vに示した。また,大変興味あることに,不可逆な還元波の出現の後,電位を酸化側へと走査すると,-0.50Vと+0.77Vとに二組の可逆な酸化還元波が観測された。今のところ,この詳細については不明であるが,結合の解離や転移を伴っていないことを考慮に入れると,第一の可逆波は[S_2]^+,第2は[S_2]^<2+>によるものと推測される。以上の結果を総合すると,S_2の環境は極めて電子過剰の状態であり,また,比較的安定に保持されていることを示唆している。これは,Cp^*Rhによる立体的保護ならびにπ逆供与により硫黄上の電子密度が増大することに起因する為と考えられる。そこで,このロジウム二核上に保持されているS_2配位子は,求核剤としての機能を有することが期待されることから,種々の双極子化合物との反応についても今後検討を行う予定である。
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