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¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥3,000,000 (Direct Cost: ¥3,000,000)
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Research Abstract |
スピン偏極電子ビームの生成方法として,超格子構造半導体型フォトカソードを試作し,このカソードから得られるビームの性能を系統的に調べた。MBE法により試作した超格子構造は,GaAs-AlGaAs,InGaAs-GaAs,InGaAs-AlGaAsの3種類であり,後者2つは歪み井戸層を有している。それぞれのフォトカソードに対し調べた性能は,(1)偏極度,(2)量子効率,(3)表面電荷制限現象,(4)スピン緩和時間の4つであり,前の3項目は名古屋大学の偏極電子源装置,最後の項目は大阪府立大学のフォトルミネッセンス観測装置により測定した。この結果それぞれの項目に対し,以下のような新しい知見を世界に先駆けて明かにすることができた。 (1) 最も高い偏極度(〜90%)はInGaAs-GaAsにより得られる。InGaAs-AlGaAsでは(70〜80)%が得られ,GaAs-AlGaAsでは約70%が限界となることが判明した。この理由についてはなお追求中である。 (2) 高い量子効率(〜0.5%)がGaAs-AlGaAsで得られ,これに準じた量子効率がInGaAs-AlGaAsでも可能であること,これに反してInGaAs-GaAsは1桁低い量子効率しか得られないことが確かめられた。これらのデータから「高い量子効率にはバンドギャップの広い超格子構造が有利である」という法則性を導くことができた。 (3) 70keV電子銃を用いて,高密度・ナノ秒マルチバンチ・偏極電子ビームの生成試験を実施した。このテーマの課題は,NEA表面に溜まる電子により後続の電子が真空に出るのが阻害される表面電荷制限現象の緩和であったが,超格子構造による伝導帯のシフトを利用しNEAを大きくする方法によりこの現象を克服でき,空間電荷制限密度のマルチバンチビームが生成可能であることを証明できた。 (4) 3種類の超格子につきフォトルミネッセンス測定を実施し,室温でのスピン緩和時間は(70〜100)ピコ秒,全緩和時間は(60-70)ピコ秒の範囲に分布することを明らかにした。
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