Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
1.昨年度までにヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤が高い抗腫瘍活性を示すことが示されたので、本年度は構造の多様なHDAC阻害剤の開発を目指した。酵素と共有結合することにより不可逆阻害を引き起こすトラポキシンと、HDACの活性中心亜鉛イオンと相互作用する可逆阻害剤トリコスタチンAとのハイブリッド化合物(CHAP)を合成し、その強力なHDAC阻害活性を明らかにした。さらにCHAPにおける基質アナログとなるメチレン鎖の長さやその先端の阻害基の種類を変えることにより、阻害剤構造の最適化を行った。これにより環状ペプチド骨格部分の改変による阻害剤の特異性変換のためのリード化合物が得られた。2.抗腫瘍抗生物質レプトマイシンB(LMB)の標的として同定したヒトCRM1が蛋白質核外移行シグナル(NES)の受容体であることを明らかにしたが、本年度はレプトマイシンによるCRM1機能の阻害作用の詳細を検討した。まず、分裂酵母のLMB高度耐性変異株を取得し、その耐性変異が分裂酵母Crm1の中央保存領域のCys-529がSerへ置換したものであることを明らかにした。LMBとの結合実験からCys-529がLMBとの結合に必須であること、Cys-529とLMBとの結合は、LMBの不飽和ラクトンとSH基との付加反応であり、このようなLMBとの共有結合が起こる蛋白質はin vivoではCRM1のみであることを証明した。
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