Research Abstract |
シスタチン類の標的プロテアーゼに対する阻害機構を分子レベルで解明するため,ヒト・シスタチンAを研究対象として,そのN-末端部の役割解明,α-ヘリックス構造の検討,C-末端とN-末端領域の相互作用の推定などにより,シスタチンAの阻害機構の解明を試みた。 実験的手法として,先ず,PCRを用いた部位特異的変異法により,変異型シスタチンAを大腸菌にて発現・調製し,抽出・精製後,それらの諸性貭を検討した。それら変異体の種類と諸性貭検討の結果について,以下に要約する。 1.シスタチンAのN-末端領域にグリシンが2個並んで保存されており,そのうち,後の5番目グリシン(G5)に対して,Ala,Arg,Pheなど7種の置換変異体を作製し,それらの諸性貭を測定し,野生型シスタチンAと比較検討した。その結果,置換による立体構造上の変化,阻害活性などに大きな相違は見られず,5残基目にグリシン存在の必然性は無いと結論した。 2.シスタチンA分子中,α-ヘリックス構造を屈曲させている25番プロリン(25P)の役割解明のため,セリンに置換した変異体(P25S)および24番リシンのグルタミン酸置換変異体(K24E)などを調製した。その結果,P25Sは野生型と良く似た性貭を示し,プロリン(25番)の存在意義は無いと結論された。 3.C-末端側L95,T96のアルギニン置換体(L95R,T96R),N-末端側P3のグルタミン酸置換体(P3E)および,それらのdouble mutants(P3E-L95R,P3E-T96R)などの変異体を作製し,それらの諸性貭の測定結果より,シスタチンAのN-末端とC-末端の領域は,水素結合による分子内相互作用に基づいて安定化されていると推定できた。
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