Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 1998: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1997: ¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
|
Research Abstract |
大腸菌の主要酸性リン脂質の膜中レベルを低下させるpgsA3変異およびホスファチジルエタノールアミンを消失させるpssA完全欠損変異はいずれもポーリンタンパク質OmpFを減少させ、構造遺伝子ompFの翻訳段階を負に制御するmicF RNAの発現を両変異は増大させた。また、鞭毛マスターオペロンflhDCは両リン脂質変異によりいずれも転写段階で抑制されていた。これらの減少は、特定のリン脂質の多寡でなく、両性リン脂質と酸性リン脂質の量比の異常により惹起されると考えられる。 大腸菌の主要酸性リン脂質の膜中レベルを著しく低下させるホスファチジルグリセロリン酸シンターゼの構造遺伝子pgsA3の欠損変異pgsA3による鞭毛マスターオペロンflhDの転写抑制に関わるflhD上流制御領域の性質を調べた。pgsA3変異による転写抑制がflhD上流制御領域のうち、転写開始点とプロモーター領域を含む114bpにより生ずることを明らかにした。またこの領域でカタポライト抑制並びに2成分制御系EnvZ-OmpRによる高浸透圧での転写抑制がみとめられた。 大腸菌野生型P90C株をトランスポゾンminiTn10::camを保持したプラスミドpNK2884で形質転換し、IPTGで誘導して、染色体上に無差別にクロラムフェニコール(CM)耐性遺伝子を指標にしたトランスポゾンを挿入して、遺伝子破壊突然変異を起こした。酸性リン脂質欠損のままでflhDCの転写活性が、元のPgsA3変異株より上昇している株を用いてCM耐性遺伝子挿入による、破壊遺伝子部位を同定する解析を進めている。flhDC転写発現において、重要な細胞機能を示す制御領域と膜酸性リン脂質欠損の関わる領域での重複が認められ、また酸性リン脂質によるflhDC転写抑制に関わる遺伝子が推察されたことは、酸性リン脂質の遺伝子発現における役割を考える上で大変興味深い。 大腸菌の欠損したホスファチジルグリセロリン酸(PGP)シンターゼをコードする″pgsA3変異による酸性リン脂質欠損は致死的である。今までにこの致死性を抑制する変異として主要外膜リポタンパク質Lppの欠損のみが知られていた。今回新たに枯草菌染色体部位ypoPを低コピープラスミドに保持させることにより、PGPシンターゼ活性とリン脂質組成を正常に回復せずに、致死性を抑制することを見いだした。この枯草菌遺伝子部位の発現で酸性リン脂質欠損によるストレスシグナルに影響を及ぼす可能性が考えられる。大腸菌の主要酸性リン脂質合成欠損変異pgsA3変異の致死性を抑制する新たな変異として、好気性グリセロールー3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子glpDの変異が見い出された。glpD変異によりG-3-Pの酸化が低下し,基質レベルが増大し,酸性リン脂質合成が高まり,pgsA3変異の致死性が抑制されたと推察される。 大腸菌の主要両性リン脂質ホスファチジルエタノールアミンの合成開始過程を触媒するホスファチジルセリン(PS)シンターゼの構造遺伝子pssAの発現制御の存在と仕組みを明らかにしようとした。今まで不明であつたpaaAの転写開始点、プロモーター領域を初めて明らかにし,またlacZをレポーター遺伝子とするpssA上流域との転写または翻訳融合のλファージ溶原株を用いて,転写発現および翻訳発現が培養温度で異なり、高温(42℃)でいずれも抑制される結果を得た。さらに遣伝的なpssA発現の制御因子を探索のため, トランスポゾンによる遺体子破壊変異のpaaA1温度感受性変異株への導入により,PSシンターゼ活性が約30倍に上昇した変異株が分離された。
|