Research Abstract |
テトラヒドロイソキノリン類が人脳内に存在しそしてパーキンソン病の発症や抑制に関連することが明らかにされているが,その生理化学的な研究は必ずしも進んでいるといえない.研究を阻害する主な原因は微量成分であるためのサンプル入手の困難さにある.その意味で,簡便でかつ効率のよいテトラヒドロイソキノリン類合成法の開発が,パーキンソン病の発症原因やその発症を抑制する機構などの生理化学的な機構の解明に寄与すると考え,本合成研究を開始した. テトラヒドロイソキノリンの合成をsulfoxideを経由するPummerer型環化反応を用いて検討した.本反応は試薬にtrifluoroacetic anhydrideを,また,溶媒としてベンゼンを用い,そして基質の窒素原子における保護基にホルミル基を用いて行ったとき,その分子内環化反応が定量的に起こることを見いだした.さらに,trifluoroacetic anhydrideとborontrifluoride etherateの組み合わせ試薬の反応では,さらに分子内環化反応が進行し,テトラヒドロイソキノリンが効率よく得られることを見いだした. このように,Pummerer反応の分子内環化を利用したテトラヒドロイソキノリン合成法は極めて有効であること,そして環化の位置が異なることからPictet-SpenglerやBischler-Napieralski法の相補的な一般合成法になると結論できる.最近キラルな1-MeTIQの薬理試験の結果パーキンソン病誘発抑制作用に立体選択性があること,すなわちそのR-体が対応するS-体より強い保護作用を明らかにした.
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