匂いによる異種感覚記憶の統合への影響に関する行動学的分析
Project/Area Number |
09710039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
実験系心理学
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上野 吉一 北海道大学, 実験生物センター, 助手 (40261359)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1998: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | 嗅覚手掛り / 視覚手掛り / 弁別課題 / 霊長類 / 種間比較 / 記憶 |
Research Abstract |
匂いによる異種感覚記憶の賦活化ならびに統合化は、他の感覚刺激に比べその効果は大きいという見解がある。そこではこうした匂いの働きを"プルースト効果"としばしば呼ぶ。しかしいっぽう、匂いにはそうした特別の働きはないとする見解も存在する。ヒトを対象とした匂いと記憶の関係に関する最近の研究では、匂いが一様に異種感覚記憶の統合へ影響を与えるのではなく、情動による影響が重要な要因であることが明らかになってきている。情動反応を引き起こすような場面において、その場面を横成する刺激全体を匂いを手掛かりとして記憶するというこうした働きは、生物学的に考えた場合、外的環境への反応をより効率的にするといえるだろう。たとえば捕食者の匂いに対し嫌悪ないし忌避学習する場合、その匂いに対し常に等しく反応したのでは、自らの行動域を著しく狭めることにつながる。その匂いに結び付く状況を精緻に判断し、対応する方がより効率的になる場合は少なくないだろう。つまり、プルースト効果は生物学的な基盤の存在が予想される。 こうした効果はまた、匂いが中枢へ投射される経路の特異性を反映している可能性は大きい。すなわち、感覚や記憶の統合なるいは情動に強く関与する扁桃体には視床-皮質を経由した後に投劃する視覚や聴覚とは異なり、嗅覚の受容細胞(嗅細胞)からまず始めに扁桃体に投射されるという特性が異種感覚記憶の統合や情動との結び付きに関与していると考えられるだろう。 以上のことから、匂いによる異種感覚記憶の統合現象は、ヒト以外の哺乳類でも情動反応を伴うという条件において見られる可能性が高い。しかし、今回の研究では、残念ながらその存在を示すことができる結果を得ることができなかった。今後、被験体に課すタスクを改善することで、可能にすることができると考える。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)