Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1998: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1997: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Research Abstract |
本研究は,町並み保存問題と呼ばれる問題領域の重要な事例・小樽運河保存問題の社会学的研究を軸に,それが水俣病といった健康被害・公害問題とどう関係するのかを問題としようとするものであった。ここでいう町並み保存問題は,単なる「好事家の手なぐさみ」ではない。町並み保存問題は,我々の「日常生活空間」が社会的に編成され,その空間形態の改変は様々な主体の攻防の結果として行われる。ゆえに町並み保存問題は,社会学,とりわけ都市社会学と環境社会学にとって根本的な問題領域であると考えられる。したがって本研究は,都市社会学とも接続する,環境社会学的実証研究の一環である。 具体的には,昨年度に引き続き小樽と水俣における調査を実施し,下記のような成果を得ることができた。(1) 昨年度,運河問題の史上初の元市長へのインタヴューに成功したが,今年度もインタヴューを行い,今まで存在しか知られていなかった貴重文書を閲覧することができた。その過程で,運河保存運動と対立し埋立を強行した行政側の論理が,実は国庫補助金受給事業の途中変更により,今後の補助金受給が不可能になるという予期にあったことが解明された。 (2) 小樽市内の運河・色内・堺町地区に存在する276棟の建物がどう変化したかを調査し,先行研究が行った一九九二年の調査結果と比較分析を行った。その結果,小樽は「運河のまち」として観光ブームで沸いているにもかかわらず,観光資源である当の歴史的建造物自体が減少し,景観が大きく変化していること,その変化の中心が堺町地区であること,などが解明された。 (3) 水俣でのインタヴュー調査と小樽のデータを比較すると,小樽では「好事家の手なぐさみ」や「美醜の問題」とされ,水俣では「客観的症状のない,主観的な症状の訴え」による詐病とされてきたように,問題自体やそのの原因が,共通して「個人の領域」へと矮小化され,パブリックなものとしてフレームが設定されていないことが解明されてきた。 以上が,1998(平成10)年度,すなわち第2年度目の研究成果の概要である。
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