痴呆性老人家族介護者の抱える倫理的ディレンマと意思決定
Project/Area Number |
09710158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
社会学(含社会福祉関係)
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Research Institution | Aichi Prefectural University (1998) Nagasaki Junshin Catholic University (1997) |
Principal Investigator |
沖田 佳代子 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (10269095)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 1998: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 1997: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 痴呆性老人 / 家族介護 / 倫理 / 倫理的ディレンマ / 意思決定 / 支援 / フォーカス・グループ / 家族介護(者) / 高齢社会における倫理 |
Research Abstract |
本研究は、痴呆性高齢者の家族が介護状況のなかでどのように対処しているかを探求することに関心がある。研究方法としては、二つの調査方法を用いた。一つは、質問紙を用いた郵送調査であり、全部で517記票、321票を回収(回収率62.0%)し、そのうち自由回答記述の有った187票(58.3%)について、Klaus Krippendorffの内容分析(content analysis)を行った。研究者の直接的な質問を避け、痴呆性高齢者を介護する家族が日常の生活の中で感じている経験的諸事実から、本研究における特定の関心事である痴呆性高齢者の家族介護における倫理的諸問題を抽出し、分類した。118票(63.1%)が痴呆性老高齢者の家族介護における倫理的態度や行動と関係のある記述を行っていた(以上については、前年度に報告している)。今年度は、対面関係をもつ相互作用のある状況のなかで集合的データを収集するために、家族介護者のフォーカス・グループを行った。フォーカス・グループは、二つのフィールドで行った。一つは、デイサービスを利用している在宅介護継続者を対象とし、妻、嫁、娘、男性の4つの介護者グループに分けて実施した。各グループ・メンバーの募集は、デイサービスの職員の声かけによって行われ、フォーカス・グループにも職員が参加した。もう一つのフィールドは、地域的に異なったデイサービス利用者を対象に行い、調査協力が得られた9人に対する個別面接後、1つのフォーカス・グループを実施した。在宅介護継続者と、施設入所を選択した家族との混合グループで、介護者のタイブプを区別せず、デイサービス職員はフォーカス・グループに参加しないで行った。混合グループは結果として、4人(妻2、娘2)の参加であった。フォーカス・グループの話し合いでは、先の調査の内容分析から、長期にわたる家族介護で経験される葛藤を二つの局面に分けて焦点化した。一つは家族介護における初期の局面で、家族が介護を引き受ける意思決定を行う過程で経験される葛藤に焦点をあてた。もう一つは家族介護の後期局面であり、家族が介護を与えてきた痴呆症患者を施設へ入所させる意思決定を行う過程で生ずる葛藤に焦点をあてた。この二つの家族介護における局面に関して、家族介護者の経験、感情、信念などに関する詳細なデータを収集した。 フォーカス・グループ分析には、以下の1)から3)のレベルを含めた。 1) 調査票の内容分析を、フォーカス・グループによる事例的データによって確認した。内容分析結果は大量の個人データの集計であり、静態的なデータである。内容分析結果をフォーカス・グループの相互作用のある動態的データによって補完的に示した。 2) 家族介護者が利用しているデイサービス先の職員が参加した4つの介護者別グループのデータと、家族介護者が利用しているデイサービスの職員が参加しない介護者混合グループ(娘・妻、施設入所選択者と在宅介護継続者を含む)のデータを比較し、類似点・相違点について検討した。特に、職員の参加しないグループでは、職員の参加したグループではほとんど発話されなかった福祉サービス提供機関に対する不信感、家族による介護の質が施設介護で維持されない点、サービス提供者と利用者とが対等の関係でないことの不満が示された。 3) 郵送調査によるデータの内容分析では見られなかった新たな諸事実の探索を行った。特に、研究者の関心や視点というよりは、専門家の判断とは異なった、日々介護に携わる家族介護者、即ち、当事者どうしの発話のなかから定義される介護の現実、その経験やそれと不可分の情緒・感情、信念等に関するデータが確認できた。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)