Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
今年度は昨年度にひきつづき、南島研究および伊豆研究の成果に関する文献収集および整理を継続した。これにもとづき、南西諸島においては本年度は沖縄本島と宮古諸島を調査地として選定した。現地調査においては、昨年度の問題点であった日常の空間活動に焦点をあて、ひきつづき山原船とよばれる物資運搬船による海上交通の経験を聞き書き採集した。昨年度の山原船航路調査にもとづき、今年度は勝連町字平安名、および宜野座村字松田などで聞き取りをおこない、山原船の航行は海上の経験だけでなく、寄港地の社会経済生活に少なからぬ影響をおよぼしていることを確認した。すなわち、物資運搬に携わる人々は、勝連半島などに集中し、そこではマチヤとよばれる商店が住民の消費生活を支えていた。したがって海の彼方から訪れる「よきもの」のイメージは、山原船によってきわめてリアルなものとして了解されていた。いっぽう伊豆諸島調査(神津島)においては、空間に関する個人の儀礼的経験の調査を継続し、儀礼的経験の偏差は個々人の空間の経験によると判断される資料を収集した。すなわち、常に外部世界との交渉・交流をおこなってきたことによって、社会的知識が生成され、それがじっさいに島世界の認識にも運用される。ここから、生活の構成に関わってそれに指針を与えるような推進力としての世界観の重要性が浮かび上がってくる。この点に関しては、いまだ仮説の段階であるが、じゅうらいのコスモロジカルな空間概念という観点との関連性などとともに、今後追究していくべき課題である。