Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 1998: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Research Abstract |
昨年度より引き続き,チベット大蔵経のうち西の系統に属するStog Palace写本とTokyo写本を,東の系統に属するPeking版,Narthang版,及び漢訳を参照しつつ,複数の典籍に渡って比較対照調査した結果,以下のことが明らかとなった. (1) 従来報告されていた通り,Stog Palace写本とTokyo写本との読みが一致して,東系統とは異るという一般的傾向が顕著に現れている.対象典籍を拡張しても,この傾向は変わらなかった. (2) Stog Palace写本とTokyo写本の読みが異る箇所では,従来はStog PaIace写本の方が東系統に一致するという報告がされていたが,昨年度の調査ではそのような傾向は見られず,今年度も同様であった.従来の写本系統研究についての再考が必要となろう. (3) Stog Palace写本はTokyo写本と比較して,安易な誤写・誤記が多い.このことはTokyo写本の方が複数のソースを参照して誤写・誤記を防いでいたことの傍証となりうる. (4) Stog Palace写本の読みが他のどの版本・写本とも異り,唯一漢訳のみと一致する箇所が存在する.漢訳の歴史性とチベット訳の忠実性に鑑みたとき,Stog Palace写本の読みこそ「本来の正しい文」であると考えら れる.ただし残念ながら,このような貴重な事例は一典籍当たり数ヶ所に止まる. (まとめ) 従来のようにStog PaIace等の写本を用いない研究では,「本来の正しい文」を見失ってしまうおそれのあることが2ヶ年に及ぶ本研究を通じて明らかとなった.今後もチベット写本の研究を継続し,注意を喚起していきたい.
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