Project/Area Number |
09710309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
国文学
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Research Institution | Kyoto University (1998) Nara Women's University (1997) |
Principal Investigator |
須田 千里 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60216471)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1998: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 泉鏡花 / 書誌 / 重版 / 異装版 / 再刊 / 改版 / 版権 / 春陽堂 / 異版 / 再刊本 / 特装版 / 函 / 袋 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続き各図書館の蔵書を調査し、書誌データの蓄積を行い、鏡花単行本の書誌的特徴について通時的・共時的考察を行った。特に鏡花研究の第一人者である、上智大学名誉教授村松定孝氏蔵本から、『冠弥左衛門』初版(明治二九年九月三十日)の他、初刊本『相合傘』再版・ 『遊里集』八版・『友染集』四版等これまで知られていなかったものを確認・調査した。 本年度購入した図書についていえば、例えば『昭和新集』・『辰巳巷談』(昭和二三年二月)の函の異装版を確認した。また、大正期以降、重版において、印刷所が複数に亙ったため、同じ版数でも発行年が相違するものがいくつか存在することがわかった(例;『遊里集』・『粧蝶集』・ 『友染集』等)。さらに、定価の訂正が多く、初版であっても貼紙訂正・ゴム印訂正・貼紙の上からゴム印訂正などが見られることが確認されたが、これは、各地に売れ残った本が時間経過と共に定価の訂正を受けたためと推定される。また、 『誓之巻』(明治三九年一月、日高有倫堂)所収「誓之巻」末尾の、本作初出の発行社博文館に対する謝辞、『鏡花集』第二巻所収「高野聖」末尾の、単行本『高野聖』の版元佐久良書房に対する謝辞は、各々『鏡花全集』未収録であり、かつ、当時の版権のありようを考える際に重要である。鏡花本を多く出版している春陽堂が、関東大震災によって紙型を焼失したため、漱石本同様『湯島詣』(大正一三年一月改版)・『通夜物語』(大正一三年六月改版)・ 『婦系図』(大正一三年六月改版)等も「改版」され、新たに活字を組み直して再刊されたことも判明した。 以上のように、出版・印刷面における鏡花本の歴史的変遷、同時代との係わり、流通のありようの一端か明らかになり、新しい知見が多く得られた。
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