ヘミングウェイの描く女性性の解読と,彼の男性的イメージ構築に見る同性愛嫌悪の研究
Project/Area Number |
09710339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
英語・英米文学
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷本 千雅子 名古屋大学, 言語文化部, 助教授 (90273200)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 1998: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Keywords | ヘミングウェイ / アメリカ学 / フェミニズム / セクシュアリティ / ジェンダー / (ポスト)コロニアリズム / クイア- / エイジング / エクリチュール・フェミニン |
Research Abstract |
科学研究費で平成10年度に行った研究の成果は以下の通りである。 ○ヘミングウェイ作品に書き込まれた同性愛(特にレズビアニズム)に焦点を当て、彼の描くセクシュアリティの多様性を分析した。その結果、男性登場人物におけるメイル・アングザエティの正確な描写が、レズビアンを含む女性の性的快楽に対するヘミングウェイの鋭い考察から生まれたものであることが証明された。また、作品分析において、老齢化の問題と植民地の問題を視野に入れることで、老齢、人種、性差という社会的抑圧コードが互いに深く結び付いていることが構造的に解明された。これらの研究の成果として、「『老人』と『海』の危険な関係-エイジング/コロニアリズム/ジェンダー」、「同性愛と女の性的快楽-『日はまた昇る』のブレットと『エデンの園』のキャサリン」という二本の論文を執筆した。前者は3月に刊行、後者は論文掲載が決定している。 ○平成9年度から調査中の『エデンの園』のマニュスクリプトを題材に、出版されたテクストと未出版のマニュスクリプトとの比較考察を行った。その結果、未出版部分にヘミングウェイの同性愛的傾向が隠されていることが発見された。さらに、日米における新聞・雑誌記事や広告、キーウエストなどの観光地で販売されている似顔入りグッズなどにおけるヘミングウェイのイメージ分析を通して、パパ・ヘミングウェイが男性性の記号として流通していることが確認された。それらを踏まえて、「パパ」の記号化やマニュスクリプトの編集作業の裏に、社会の同性愛嫌悪が隠されていることを考察した。この成果は、平成10年10月、日本英文学会中部支部大会で行われたシンポジウム『装置としてのアメリカ』において、 「パパ・ヘミングウェイの故郷アメリカ」というタイトルで発表した。 ○ボストンのJFK図書館において『エデンの園』のマニュスクリプトを調査し、前年度に引き続き約500ページ分をファイルとして保存した。 ○老齢の問題とジェンダーの関係を考察するため、ヘミングウェイに限らず、日本、アメリカ、フランス文学を幅広く検証した。これらの調査を踏まえ、今後、セクシュアリティ研究を比較文学的に展開していくつもりである。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)