Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
求償については利害関係者が多様かつ多数であるために、複雑な問題となっている。このために、判例は問題解決基準が簡明であることを要するとしているが(最判昭和61年11月27日民集40巻7号1205頁)、解釈論としては簡明さの要請を民法典に根拠づける必要があり、それが民法学の課題となっている。本研究はデュムーラン以降のフランス法学史とその継受を検討することによって、簡明さの要請が民法の求償規定に示されていることを明らかにしたものである。たとえば保証人と第三取得者相互間の求償問題について、日本民法は保証人からの求償を認める一方で、第三取得者の求償を否定する(501条1号・2号)。この規定が設けられた背景にはフランスにおける種々の議論があった。それぞれの見解は利益衡量を通じて妥当な結論を導こうとするものであったが、その想定する事案や取引実態が異なるために結論が異なっていた。そして、問題状況が複雑であるために細かな利益分析が示されて、種々の場合分けが主張されることになった。ところが日本民法は、この議論を受け継ぐ過程で、そういった場合分けを捨象した。そのさいに拠り所とした発想は基準の簡明さであった。すなわち、もし具体的な妥当性だけを追求すれば、利益衡量にさいし多様な事実関係を考慮することになるが、それは複雑な問題をさらに複雑化させ、結果として当事者の予測可能性を奪うという危険をはらんでいる。むしろ、問題解決のための基準は簡明であることが求められる場合もある。このように、多数当事者関係では、具体的な妥当性だけでなく問題解決基準の簡明さも考慮すべきであるとともに、学説史としてみれば民法典になかにも簡明さの要請を読みとることができるのである。なお、この研究成果については国際シンポジウムで報告しており、「研究発表」欄にあげた論文はシンポジウム資料集に掲載されたものである(別途、平成11年度内に邦語とドイツ語で刊行される論文集に掲載されることになっている)。
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