Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1998: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
|
Research Abstract |
北太平洋におけるDICE(Decadal/Interdecadal Climate Events;10年規模変動)に伴う海面水温(SST)偏差の詳細な解析を,過去40年間の船舶観測データに基づいて行なった.その結果,DICEに伴う変動は,エル・ニーニョに伴う数年規模変動とは異なり,熱帯では赤道に沿ってあまり強いないこと,中緯度では平均的にSST勾配の強い亜帯・亜熱帯両海洋前線や沿岸域に集中する傾向が初めて確認された.この中緯度の傾向は,DICEにおける海洋大循環のより能動的な役割を示唆するものである.更に,DICEに伴う熱帯のSST変動が亜熱帯前線における変動とは強い同時逆相関を示すものの亜寒帯前線における変動とは同時相関を持たないことが初めて示された.前者のSST変動は海上の亜寒帯高気圧の変動と北東太平洋上空の南北振動を伴うが,後者のSST変動は海上のアリューシャン低気圧の変動と上空のPNA(Pacific/North American)テレコネクション・パターンを伴う.我々が東西非一様流中を伝播する定常ロスビー波に対して初めて定式化した活動度フラックスを適用したところ,PNAパターンに伴ってはフラックスが亜寒帯前線上空で強く発散しており,大気のテレコネクションを通じた熱帯からの遠隔影響でその下のSST偏差が生ずるとした従来の解釈では説明できないことが分かった.寧ろ,北太平洋中高緯度には,そこの大規模な大気海洋相互作用によって独自の10年規模の気候変動が生じていることが初めて観測データから示唆されたのである.観測されたこれらの大気偏差は,海上の風速や気温を弱いながらも持続的に変化させ,乱流熱フラックスや長波放射,海洋混合層の攪拌,エクマン流,大規模風応力の変化を通じて,既存のSST偏差を維持・強化するよう働くことが確認された.また,東シナ海には冬の極東モンスーンの10年規模変調を反映して,独特なSSTの10年規模変動が存在することも初めて明らかになった.
|