Project/Area Number |
09740425
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
沢邊 恭一 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (80235473)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1998: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | TiO_2(110) / ab initio MO / formate / STM / electronic structure / chemisorption / surface |
Research Abstract |
ルチル構造TiO_2の(110)表面での蟻酸イオン吸着構造とその電子状態に関する研究を行った。計算にはHartree-Fock(HF)法とBeckのB3LYP法を使用した。Tiの基底関数には短縮基底関数[14s11p5d/5s3p2d]かHay-WadtのECPを使用し、C,H,Oに関してはHuginaga DunningのD95V基底にdiffuse関数と分極関数を付加したものを使用した。表面のモデルは(TiO_2)〓n[n=2,4,6,7]のモデルクラスターを用い、その構造パラメータはバルク構造を採用した。モデルクラスターの(TiO_2)〓6及び(TiO_2)〓7はTiO_2表面特有の突出した酸素と[001]方向に2つの5配位Ti原子を含むようなモデルであり、最小の表面モデルといえる。基底関数や電子相関などの近似レベルのチェック、クラスターサイズやTi原子の配位数などの効果、を調べるためには小さいモデルクラスターを使って検討した。 2つのTi原子を吸着サイトとするブリッジ型吸着に関してHF法やB3LYP法による吸着構造の最適化計算をおこなった。バイデンテイト型など他の吸着構造に関しても検討したが、ブリッジ型のみが安定な構造を与えた。モデル(TiO_2)_6及び(TiO_2)_7における最適化構造は、Ti-O間の結合長とO-C-O間の結合角がそれぞれ2.00Åと127.9°になり、実験値の2.0Åと126°とよく一致していた。また、蟻酸イオンの吸着構造は孤立系の構造をほとんど保持したままであった。他の小さいモデルクラスターでも、その最適化吸着構造はモデル(TiO_2)_6及び(TiO_2)_7のときと大きな差異が見られず、表面Tiの配位数や突出酸素が吸着蟻酸イオンの構造に影響がないことが示唆された。吸着前後での差電子密度を比較すると、突出酸素と蟻酸イオンの間には直接的な相互作用がないことがわかった。また、結合次数解析をおこなったところ、表面Ti原子と蟻酸イオンの酸素原子の間の共有結合性は0.3から0.4であり、電子の授受はほとんどなかった。エネルギー分割法によって吸着相互作用を解析したところ、蟻酸イオンとTiO_2表面との相互作用は静電相互作用や分極相互作用が支配的であることがわかった。 蟻酸イオンは空軌道としてC,O原子のp軌道からなるπ^*(2b_1)軌道とC-H側に空間的に広がったσ^*(7a_1)軌道がある。TiO_2の(110)表面への吸着の際に電子の授受がないことから、STMにおける画像はこれらの軌道のどちらかがそのまま観測されていると考えられる。HF計算によるとモデル(TiO_2)_6での蟻酸イオンの吸着状態では、蟻酸イオンの原子が関与するもっとも低い空軌道は孤立系のときの7a_1軌道であった。したがって、STMで観測される画像は7a_1軌道であることが示唆された。
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