芳香族分子の2量体イオンの幾何構造が分子間の電荷共鳴相互作用に及ぼす影響
Project/Area Number |
09740450
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Kyushu University (1998) Okazaki National Research Institutes (1997) |
Principal Investigator |
大橋 和彦 九州大学, 理学部, 助手 (80213825)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1998: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | ベンゼン / フェノール / アニリン / ベンゾニトリル / クラスターイオン / 光解離分光 / 電子スペクトル / 赤外光解離分光 / 振動スペクトル |
Research Abstract |
ベンゼン-フェノール,ベンゼン-アニリン,アニリン-アニリン,ベンゼン-ベンゾニトリル,ペンゾニトリル-ベンゾニトリルの各2量体イオンの近赤外領域における光解離スペクトルを測定した.ベンゼン2量体イオンと目的の2量体イオンを同時に光励起し,それぞれのイオンの減少量から相対光解離断面積を求めた.測定した全ての2量体イオンについて,光解離断面積はベンゼン2量体イオンの数%程度であった. 近赤外領域に強い電荷共鳴吸収帯を示すベンゼン2量体イオンは,分子間でのπ電子のやりとりにもとづく強い共鳴相互作用が存在し,2つの分子の芳香環が重なりあう(ずれた)サンドインチ型構造をもつ.今回測定を行った2量体イオンのうち,ベンゼン-フェノール,ベンゼン-アニリンについては振動スペクトルが既知であり,OH基あるいはNH_2基のH原子とベンゼンのπ電子とが水素結合をした構造が推定されている.電荷共鳴吸収が観測されなかったことは,分子間の共鳴相互作用が小さいと考えられるπ水素結合型の構造を支持する.また,アニリン-アニリン2量体イオンの振動スペクトルも既知であり,一方の分子のNH_2基のH原子と相手分子のNH_2基のN原子とがN-H…N水素結合をした構造が推定されている.このイオンの場合は,水素結合を保持したままでサンドインチ型構造をとることも不可能ではないと思われるが,やはり電荷共鳴吸収が観測されなかったことから,2つの分子の芳香環は重なりあっていないことが示唆される. これまでに得られた結果を総合すると,芳香族分子の2量体イオンでは,分子間水素結合が存在しない場合は,電荷共鳴相互作用が支配的であり,サンドイッチ型構造をとるが,分子間水素結合が存在する場合は,そちらの方が共鳴相互作用よりも優勢であり,水素結合が切断されたサンドイッチ型構造はとらないといえる.
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)