Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 1998: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 1997: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Research Abstract |
近年、水素結合や配位結合などの方向性のある弱い力を利用して結晶中の分子配列を制御しようとするクリスタルエンジニアリングが盛んである。これらの配列制御による一つの大きな目標は不完全な結晶構造を構築すること、すなわち結晶中にナノレベルの大きな隙間や空孔、あるいはチャネルなどを形成させることである。このような結晶は存在する空間に小分子や溶媒、ガスなどを吸着、あるいは吸蔵し分子性のゼオライトの機能を持つと考えられる。我々はこれまでの研究から水素結合型トリスビイミダゾールNi(II)錯体([Ni(Hbim)3]-)(1)が互いに相補的な分子間水素結合を形成し、長距離秩序を持ったネットワークを形成することを見い出した。しかも、その配列構造や次元性は用いるカウンターカチオンの形状や性質によってダイナミックに制御できるのである。今回、この錯体1を集積して得られる2次元ハニカムシート構造が直径約2ナノメータの大きさの穴をもつことに着目し、この穴同士を上下に積層させればナノサイズの一次元チャネルを構築することができると考え、これらを集積できるカチオン性物質の探索を目的とした。その結果、このような一次元ナノチャネルを集積するカウンターカチオンをいくつか見付けることができた。得られた一次元ナノチャネルを有する結晶構造のうち4-Phenyl-1-ethylpyridiniumcation(2)の構造について報告する。(結晶学的なデータ:Monoclinic,P21/c,Z=4,a=8.103(7)Å,b=29.74(1)Å,c=18.54(1)Å,b=98.29(7)゚,V=4420(4)Å3,R=9.1%,Rw=6.2%.)図に示したようにこの結晶構造は錯体1にあるビイミダソール配位子が互いに相補的な分子間水素結合を形成し、その2次元ハニカム型に集積されたシート構造が積層する事によって得ることができる。このハニカム型のシート構造は錯体1の光学異性体であるΔ型とΛ型が交互に水素結合することによって形成されている。結晶全体はこのシートがc軸方向に積層する事によって一次元ナノチャネルを持つ多孔質結晶を構成しているのである。このシートの6分子の錯体1から得られる空孔内にはカチオン2が4分子と過塩素酸イオン(ClO4-)が2分子存在し、カチオン2は1つの空孔内に2分子ずつ3.69Åの距離でスタッキング相互作用によってダイマー構造を形成している。この結晶の一次元ナノチャネル内にはカチオン2による2つのカラム構造が存在し、その間に挟まれるようにClO4-アニオンによるカラムが形成されている構造となっている。
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