Project/Area Number |
09740651
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
人類学(含生理人類学)
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
海部 陽介 国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (20280521)
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Project Period (FY) |
1997 – 1998
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1998)
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Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 1998: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1997: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 咬耗 / Attritional occlusion / 舌側傾斜 / 古人骨 / 咬耗咬合 / ダーウィン医学 / 時代変化 |
Research Abstract |
昨年度の、日本人における歯の咬耗パターンの時代変化の調査に引き続き、本年度は、咬耗の激しい集団(縄文時代人)における、咬耗の進行に伴う顎・歯列形態の変化、および様々な咬耗状態を示す5つの日本人集団(縄文、弥生、鎌倉、江戸、現代)の間での顎顔直形態の比較を通じて、以下の新知見を得た。 1. 縄文時代人の前歯部では、咬耗による歯の近遠心径減少に伴って生じるはずの隣接歯間空隙は、上下歯の舌側傾斜によって埋められる。つまり前歯は、歯列形成期当初では比較的前突した状態にあるが、これが舌側傾斜するため咬耗が激しくても隣接歯間空隙が生じず、歯列・咬合の調和が維持されている。 2. 縄文時代人の前歯部では、咬合面咬耗によるoverbiteの解消と、上記の舌側傾斜が下顎歯より上顎歯でより大きいことが主な原因となって、歯列形成期の鋏状咬合が序々に鉗子状咬合に推移していく。 3. 以上の知見は、咬耗の激しい縄文時代人においては、歯列・咬合形態というものは本来静的なものでなく、成人以降も咬耗による歯の外形変化に応じて動的に変化して行くものであると言うことを示している。 4. 以上のような、咬耗に伴って顎顔面形態が変化していく機構(咬耗に対する補償作用)は、現代人を含む弥生時代以降の日本人集団にも潜在的に保持されていることが、強く示唆された。 5. 以上から、人類はそもそも咬耗の激しい環境に適応しており、咬耗の進行を見越した補償作用を進化させ、これが現代人にも受け継がれていることが強く疑われる。これは、文明や産業の発達により、自ら急速に変化させてしまった環境に、人類がまだ適応できていないことの1つの重要な例であると考えられる。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)