Research Abstract |
スピネル型フェライトは磁性材料としてのみならず,環境汚染浄化物質としての機能性も注目されて材料である。過去の研究により65℃以上における水溶液合成反応については工業化されており,機能材料製造に関する基礎的知見はかなりの程度が理解されつつあるものの,反応温度が室温(20℃)付近における合成報告例は少ない。反応温度を下げられれば製造工程の省エネルギー化並びに超微粒子生成が期待される。本研究では,従来65℃以下では困難とされていた室温におけるスピネル型フェライト生成反応を見出し,そしてその反応機構について検討した。その結果,フェライト生成反応は温度が低い程溶存酸素濃度の影響を強く受けることが分かった。即ち,20℃以下においては,従来の65℃以上で行われる空気を送り込む酸化法が酸素濃度過剰な条件となり鉄イオンの酸化が促進され,スピネル型フェライトの生成が阻害されることが分かった。室温におけるフェライト生成反応機構を検討する上で,沈澱の固相変化の解析が重要であるが,反応過程において生成する暗緑色の沈澱は容易に酸化されるため,反応溶液の酸化還元電位の変化から間接的に見積もる手法を用いた。その結果,硫酸イオンがフェライト生成を抑制している可能性が見出された。即ち,硫酸イオン濃度が高い条件において反応溶液中の3価鉄イオン濃度が高くなる傾向が見られたことより,水酸化鉄(II)沈澱の溶解過程と鉄(II)イオンの酸化反応直後に鉄(II)と反応せずに鉄(III)イオン同士の反応が進行し,その結果フェライト生成が阻害されるという反応機構が示唆された。今後は以上の成果に基づき,反応中間体の構造解析及び化学組成の分析を進める予定である。
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