Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1998: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
高分子に入射した陽電子は0.1nm^3程度のサイズの空隙中でポジトロニウム(Ps:陽電子と電子の水素様ペア)の状態から消滅する場合がある.Psの寿命は空隙のサイズに対応し,その形成率は空隙の濃度や空隙周辺の分子運動に影響を受ける.一方,高分子のガラス転移や緩和現象は空隙のサイズや濃度と密接な関係がある.本研究では,低速陽電子ビームにより表面近傍の高分子中のPsの振るまいと分子の緩和現象との関連を調べた. 低速陽電子を用いて,ポリプロピレン(PP)の表面近傍の空隙を検出した.陽電子寿命はパルス化低速陽電子ビームを用いて計測した.実験で用いた陽電子のエネルギーは1,3,10keVであり,それぞれのエネルギーでの陽電子平均打ちこみ深さは0.04,0.2,lμmに対応する.実験より0-0.2μmの領域の空隙サイズはそれより深い領域の空隙サイズより大きいことがわかった.また,表面近傍では一般に結晶化率が高い場合に観測される陽電子寿命が観測されたが,バルクではそのような消滅様式は観測されなかった.20Kから400Kまで温度を変化させながら,陽電子消滅γ線ドップラー拡がり測定を行い,結果をSパラメーターの温度依存性としてまとめた.この結果,Sパラメーターは表面近傍では大きな温度ヒステリシスを示すことがわかった.この原因は表面近傍で結晶化率が高いため,試料温度を上げる過程では,分子運動が抑制されているためであると考えられる.また,低速陽電子により測定したSパラメーターの温度依存性は通常の高エネルギー陽電子によるそれとは大きく異なる.この原因は低速陽電子では試料中に導入されるスパー電子の密度が極端に少ないことに起因すると考えられる.
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