Research Abstract |
在宅の高齢者および障害者が,個々の身体条件に適さない福祉機器・介護機器を使用している場面を多く経験した。その一因として,福祉機器等を導入する際,写真カタログのみでその購入を判断していることがあげられる。本研究は,在宅介護支援センターを窓口として,16人の在宅の高齢者等が福祉機器等(今回は,トイレ関連機器と入浴関連機器)を購入する際,数種類の福祉機器を1週間ほどの間に実際に試用させ,カタログのみで購入した群との比較を行った。1週間試用した中で最も使用感がよく,身体機能に適した機器を選定させた結果,カタログ販売のみで購入した者10人に比較し,本人及び家族の満足度が高かった(χ^2検定,p<0.05)。また,動作分析の面では動作の安定性と遂行時間が,適合していない機器を使用した場合と比較して,統計学的な差は見られなかったものの,向上の傾向を示した(時間:t検定,p>0.05)。また,適切な機器を使用し,高齢者の自立が促されたことで,家族より介護量の減少に関する意見が多く出された。 問題点としては,トイレ関連機器,特にポータブルトイレにおいて,一度使用したときに付着した汚れを完全に取り去るために,1台に付き4,000〜5,000円程度のコストがかかり,今後このような試用システムを構築する場合の大きな障害となるものと考える。平成12年度より開始される介護保険の中でも福祉機器や介護機器の貸与及び給付が盛り込まれているが,適切でない機器の使用は,高齢者等の自立を妨げ,介護量を増加させるだけでなく,介護保険料の浪費にもつながる重要事項であると考える。本研究における機器の試用システムの構築は,それを解決する1つの手段であると考える。 なお,本研究の成果は,現在執筆中の著書に掲載する予定である。
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