Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
テロメアとp53 mutation(p53 mut)に関連して、1995年、Shayらはp53mutを持つ細胞にヒトパピローマウイルスを感染させ、p53 mutを持っている細胞が不死化することを示した。また同年、HiyamaらはRB遺伝子およびp53遺伝子の異常をもつ肺癌ではテロメア長が有意に短いと、両者の関連性を報告している。これらの報告から細胞が遺伝子変異の蓄積に伴う選択増殖を繰り返した結果、テロメア長の究極的な短縮と共にテロメラーゼ活性を獲得し、不死化した可能性が考えられる。一方、Klingelhutzらはテロメラーゼの活性化とp53は無関係であると報告している。そこで我々は平成9年度には肝細胞癌(HCC)のテロメア長とp53 mutの有無との関係を、また平成10年度には非癌部でも同様の検討を行った。研究成果の概要を以下に述べる。正常肝4例、及び手術で得られたHCC患者25例の癌部、非癌部(肝硬変、慢性肝炎)より抽出した高分子DNAを用いSouthern blot法でテロメア長(terminal restriction fragment:TRF(kb))を求めた。またPCR-SSCP法及びdirect sequence法を用いて癌部、非癌部のp53mutをexon4-9について検討した。p53 mutは癌部でのみ8例について検出された。TRFは正常肝8.9±1.2kb、慢性肝炎6.9±1.8、肝硬変5.7±0.5、癌部4.8±1.1で、癌部でp53mutが検出された8例の癌部のTRFは4.8±1.0kb、検出されなかった17例の癌部のTRFは4.7±1.2kbで両群に差はなかった。さらにHBV感染、HCV感染グループに分けた上で検討したが、いずれのグループでも有意な結果は得られなかった。p53 mutの存在しない群よりもp53 mutの存在する群においてテロメア長が短ければp53 mutによって細胞増殖性の増した細胞でテロメア短縮が促進され、しかる後にテロメラーゼの活性を獲得して癌化する、あるいは癌細胞の増殖が起こるのではないかと考えられたが、肝発癌においては両者の間に関連はないことが示唆された。