Research Abstract |
造血細胞が,分化段階の途中で分化機構破綻により,腫瘍性増殖をすることで,白血病が発症すると考えられる.ある種の白血病では,脂溶性ビタミンであるビタミンA,ビタミンDおよびその活性誘導体の投与により,増殖が抑制され,分化が誘導されることが報告されている.本研究では,その点に注目し,脂溶性ビタミンが白血病細胞の分化・増殖,細胞周期調節機構に与える影響を分子レベルで明らかにし,臨床的により効果的な分化誘導療法の確立を試みることを目的とした.平成9年度は白血病細胞株(HL-60,NB4),レチノイン酸耐性急性前骨髄球性白血病細胞株UF-1にall-transretinoic acid(RA),1,25(OH)2 vitamin D3(D3)を添加し,分化誘導,細胞周期調節機構を解析した.HL-60,NB4ともにRA,D3添加後に,UF-1ではD3添加後に,G1停止,p21^<WAF1>,p27^<KIP1>の発現増強,分化が誘導された.平成10年度は,分化誘導剤の併用効果,p21WAF1,p27KIP1の強制発現による細胞周期,分化誘導に関する影響を調べた.その結果UF-1では,RAとD3の併用により,分化誘導効果は増強され,とくにp27^<KIP1>の発現増強効果が見られた.そこで発現ベクターを用いて,HL-60,NB4,UF-1にp21^<WAF1>,p27^<KIP1>を強制発現させ,細胞周期,分化誘導に与える影響を検討した.p21^<WAF1>,p27^<KIP1>を導入した発現ベクターを作成し,HL-60,NB4,UF-1に電気穿孔法を用いて強制発現させた.NB4,UE-1ではp21^<WAF1>,p27^<KIP1>を強制発現させたクローンは,増殖抑制が強く,評価不能であった.HL-60にp21^<WAF1>,p27^<KIP1>を強制発現させた場合,細胞の増殖抑制,G1停止がみられ,フローサイトメトリーで評価すると,分化マーカーであるCD11bの発現が増強し,分化誘導が示唆された.ことにレチノイン酸副性急性前骨髄球性白血病において,D3による分化誘導の可能性が示唆された.
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