Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
136例の散発性乳癌を対象に、第1番染色体の広範な領域をカバーする28個のマイクロサテライトマーカーを用いて、multiplex PCR法にて第1番染色体長腕(1q)および短腕(1p)の増幅あるいは欠失の有無を調べた。また、長腕・短腕の増幅あるいは欠失と臨床病理因子との関連性も検討した。散発性乳癌において1pの欠失は143例中73例(51%)にみとめた。さらに各症例の詳細な欠失地図の作製を行ない、共通欠失領域を3ヵ所に限局した。1p36および1p34-p35領域の欠失例は、各々悪性度の低い非浸潤癌や乳頭腺管癌に比べ、悪性度の高い充実腺管癌や硬癌で高頻度にみとめられた。また、1p21-p22領域の欠失群では、非欠失群に比べて高頻度にリンパ節転移をみとめた。よってヒト第1番染色体短腕上には、少なくとも3つの癌抑制遺伝子が存在すると考えられ、これらの遺伝子の不活化は、乳癌の組織学的悪性度およびリンパ節転移に関与していることが示唆された。1qの増幅は136例中46例(34%)にみとめ、増幅地図の作製により長腕のほぼ全領域が増幅していた。1q増幅例は、組織学的悪性度の高い充実腺管癌や硬癌に比べ、悪性度の低い非浸潤癌や乳頭腺管癌で高頻度にみとめられた。第1番染色体長腕上に存在が推定される癌遺伝子は複数存在し、共に増幅しており、この増幅は乳癌発生の比較的初期から起こる可能性が示唆された。
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