Research Abstract |
超音波パルス・ドプラ法による臍帯循環障害の診断の可能性を検討するために,下記の研究を行った. 1) 動脈系については臍帯両端における血流波形の変化を明らかにするために,羊水が多く臍帯循環障害が生じにくいと考えられる妊娠27〜29週の胎児を対象に,カラー・ドプラ法を用いて臍動脈の胎児腹壁内走行部分を同定し,左右2本の動脈について個別にその血流波形を得た。さらに臍帯の胎盤付着部近傍において臍帯動脈血流波形を,カラードプラ法を併用して2本個別に得た。これらから,臍帯動脈の両端における収縮期最大血流速度およびこれと拡張末期血流速度の差を前者で除したresistance index(以下RI)を算出,それぞれ2本の動脈の測定値を平均し,臍帯内を通過する際の動脈血流の速度波形の変化を検討した。臍帯の胎盤付着部の同定が困難な例が多いことから,未だ80余例の検討に留まっているが,概ね胎児側では最大血流速度70cm/秒,RI0.7前後であり(後者については,我々の既報の値と一致),胎盤側ではそれぞれ40cm/秒,0.5前後と低下していることが明らかとなった。言うまでもなく,臍帯動脈はこの間一切分岐することがない為,この変化は単に約50cmの動脈そのものの血管抵抗に由来し,本研究は動脈固有(末梢血管抵抗ではなく)の血管抵抗を検討した稀なるものである。 2) 静脈系については,既報の臍帯原性の臍帯静脈血流上のpulsationと呼ばれる現象と臍帯循環障害との関係を検討,臍帯過捻転とpulsationが密接に関係することを明らかにしたほか,臍帯局所の循環障害の代表と言える頚部巻絡例についてpulsationの出現を確認した。現在,胎児ドプラ信号と心電信号との遅延と循環障害との関係について引き続き検討中である。
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