Research Abstract |
研究課題名:習慣流産患者夫婦におけるTAP遺伝子の多型性とHLA-G抗原の多型性の基礎的解析 研究目的:習慣流産の拒絶反応の標的抗原を明らかにするために,胎児由来の胎盤に発現されているHLA-G抗原およびHLA-G抗原に結合するペプチドを規定するTAP(Transporter Associated with antigen Processing)遺伝子の多型性を習慣流産患者について検討した。 研究内容:1.対象:当院で習慣流産のため夫リンパ球による免疫療法を施行した49組,98例を対象とした。 2.検討内容:TAP遺伝子をPCR-RFLP法およびSSCP-PCR法により多型性および夫婦間の遺伝子共有率を解析した。 研究方法:1.凍結顆粒球よりPhenol-Chioroform法により染色体DNAを抽出した。2.TAP1,TAP2遺伝子の多型部位をPCR法により増幅した。3.制限酵素(Sau3A,AccI,AccII,NspI,BfaI,RsaI)により切断し,TAP1A-1D,TAP2A-2Hを分類した。さらに、TAP2-3に対してSSCP法によりその多型を解析した。 成績:1.TAP遺伝子頻度 1) TAP1遺伝子頻度:TAP1A86.2%(妻86.5%,夫86.0%),1B11.2%,(10.4%,12.0%),1C 0.5%(1.0%、0%),1D2.0%(2.1%,2.0%),(A:Ile-Asp,B:Val-Gly,C:Val-Asp,D:Ile-Gly) 2) TAP2遺伝子頻度:TAP2A52.3%(妻48.8%,夫59.4%),2B 20.9%(20.9%,20.6%),2C 14.7%(15.7%,13.1%),2D2.8%(5.8%,0.6%),2E 4.1%(4.1%,3.8%),2F 0%,2G 0.5%(0.6%,0.6%),2H 3.6%(4.1%,3.8%),(A:Val-Ala-Thr-Stop,B:Val-Ala-Ala-Gln,C:Ile-Ala-Thr-Stop,D:Ile-Thr-Thr-Stop,E:Val-Thr-Thr-Stop,F:Ile-Thr-Ala-Gln,G:Val-Thr-Ala-Gln,H:Ile-Ala-Ala-Gln) 3) TAP2-3遺伝子の多型性:A86.9%,B5.6%,C6.6%(A:Ala-Met,B:Ala-Val,C:Thr-Met) 2. 夫婦間のTAP遺伝子の共有頻度 1) TAP1遺伝子の共有頻度:共有なし:0%,共有数1:46.7%,2:53.3% 2) TAP2遺伝子の共有頻度:共有なし:32.1%,共有数1:39,7%,2:28.2% 考察:反復流産夫婦のTAP遺伝子頻度は諸家の健常人のものと同等の頻度であり,また,夫婦間のTAP遺伝子共有率は高くなかった。しかし,健常夫婦間におけるTAP遺伝子の共有率,反復流産夫婦のTAP遺伝子頻度やその多型性,HLA-G抗原の多型性に関しては今後さらに検討していく必要がある。
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