Research Abstract |
前年までの研究で,眼内において,レスキュラは代謝を受け,薬理作用を示す主な構造物はレスキュラそのものではなく,その代謝物,特にM1体とM2体であることを証明した。さらにプロスタグランジントランスポーター(PGT)を遺伝子導入した細胞を用い,レスキュラ,ラタノプロストの代謝機序を検討した。その結果,他の内因性のプロスタグランジンと違い,PGTを介する細胞内移行は認められなかった。本年の研究において,レスキュラを血清,培養角膜上皮細胞から得られた,培地と反応させたところ,いずれも代謝が進行する事が判明し,主要なプロスタグランジンのトランスポーターであるPGTを介さない代謝経路がある事が示唆された。 これまで,ラタノプロストによる細胞外基質代謝酵素(MMP)の酵素活性の上昇を示してきたが,さらにレスキュラも眼内のMMP活性,特にMMP-2活性を上昇させる事が今回の研究で明らかになった。現在のところ,どの部位のどの細胞外基質の代謝が亢進しているのかまでは,解明されていないが,このような細胞外基質の代謝亢進が眼圧降下機序に関与している事が深く示唆される。 さらに,レスキュラの臨床使用における大きな副作用である,角膜上皮障害について,培養実験系を用いて,検討した。その結果,レスキュラそのものによる角膜上皮障害は軽度であるが,防腐剤として添加物してある,塩化ヒベンザルエウムとの併用によって角膜上皮障害が増強する事が確認された。従って,角膜上皮の接着性の低下している症例などにおいては,その使用に注意が必要であることが示唆された。 もう一つの主要な副作用である,虹彩などの眼内組織における色素沈着に関して,ラットの皮膚から得られたメラノサイトを用い,in vivoにおいて検討した。その結果,PGF2a,レスキュラともに,メラニン産性に関与する酵素である,チロシナーゼの活性上昇させる事が判明した。 adenylate cyclase活性は,房水産性に大きな影響を及ぼすといわれているが,これまでその測定には多くの制限があった。今回,微量な毛様体上皮細胞におけるadenylate cyclase活性の測定系を確立した。今後はこの実験系を用いPG系点眼薬を含む種々の薬物のadenylate cyclase活性への影響を検討が可能となる。
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