Research Abstract |
本研究,クレンチングと顎機能異常の関連を明らかにする基礎的研究として,クレンチングが中耳機能に及ぼす影響を検索したところ若干の知見を得たので報告する.被験者は,顎口腔系に異常を認めず,耳疾患の既往のない健常者歯顎者8名(21〜28歳,以下,健常者)である.クレンチング時の筋活動量の測定は,Muscle Balance Monitor BM-II (GC社製,以下,BM-II)を用い,柳田の報告に準じ,左右側閉口筋活動の非対称性指数(A.I.)の絶対値が11を越える者5名10耳(以下,BM+群)と11以下の者3名6耳(以下,BM-群)の2群に分類した.中耳機能の測定は,Impedance Meter MA-4000(モリタ社製)を用い,Tympanometry 4測定項目static compliance,impedance,press,ear clearance (以下,STC,IMP,PRS,EAC)とした.2群における安静時および最大噛みしめ時のSTC,IMP,PRS,EACについて比較検討を行った結果,BM-群では,4項目すべてにおいて有意な変化は認められなかった.BM+群では,最大噛みしめ時においてSTCに減少傾向が認められ,また,危険率5%にてPRSの有意な増加が認められた.顎機能異常や咬合接触状態の有用な評価法の一つとして左右側閉口筋活動の非対称性指数(A.I.)が示唆されている.演者らは,健常者におけるA.I.値の大きさに着目し,その相違による中耳機能への影響の検索を行ったところ以上の結果を得た.BM+群ではBM-群に対しA.I.値が大きいことから,いわゆる健常者の範疇にあるものの左右閉口筋筋活動量の非対称性が推察される.この筋活性の不調和が最大噛みしめ時における鼓膜張筋の収縮とそれにともなう鼓膜のstiffを生み,また,同時に鼓膜の内陥作用による中耳腔圧の上昇が惹起されたものと推察された.なお今回のこの報告は、平成10年度第99回補綴学会にて発表する予定である.
|