Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究では主に薬剤による急性顎関節炎モデル動物を作成し、皮質誘発による顎運動の運動軌跡解析を行った。実験には体重2.6〜3.3Kgの家兎を用い、ネンブタール麻酔下に開頭と咀嚼筋電極設置の後、脳定位固定装置につけてビデオカメラを用いた顎運動記録装置を頭部の正面と側面に設置した。皮質誘発部位は咀嚼様顎運動の現れる左側の大脳皮質(咀嚼野)とし、Bregma前方4mm、側方7mm付近で刺激電極の刺入深度は200μmから350Oμmとした。durationは200μsec、頻度30Hz、刺激強度は80μAで刺激した。確実な上関節腔内注射を確認するためにメチレンブルーを用いた注入確認実験を施行し、24G針での複数穿刺で注入状態良好なることを確認した。注入薬剤として選択的なC線維刺激剤であるマスタードオイルを用い、麻酔下の家兎の左側上関節腔に50μ1〜100μlの原液のマスタードオイルまたはミネラルオイルで20%に希釈したマスタードオイル20μlを注入した。注入直後より経時的に皮質誘発顎運動を記録した。また、咀嚼による負荷を与える目的で硬度の異なるグミ(No.2およびNo.4)を臼歯部に挿入して顎運動軌跡の変化を観察した。その結果、50μl〜100μlの原液のマスタードオイル注入により、下顎の安静位で正中が注入側に偏位し、皮質誘発による開口量が減少する傾向がみられた。また、これまで言われているように正常側ではグミ咀嚼によって側方偏位量が増えるが、薬剤注入側ではその偏位量がより増加する傾向があり、軌跡も歪む傾向がみられた。20%マスタードオイル20μl注入によっては誘発顎運動に有意な影響は見られなかった。関節円盤転位モデル動物の作成においては手術侵襲が大きくなり安定した顎運動誘発が困難であった。円盤転位に代えて関節円盤除去を行った実験群では皮質誘発顎運動に大きな変化は見られなかった。