Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 1998: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 1997: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
|
Research Abstract |
薬物の見かけの生物学的利用率(F)は吸収率(Fa)、腸初回通過率(Fg)、肝初回通過率(Fn)の積として表されるが、これらの値を分離評価することは、薬物間相互作用がどの過程で起こっているかを解明するために重要である。そこで本研究では、シクロスポリン(CyA)をモデル化合物として用いて、Fg、Fh、Faの分離評価を試みた。 【方法】(1)ラット門脈にカニューレを挿入し、非拘束状態で門脈血を採血した。 CyAを経口投与または静脈内投与、門脈及び眼窩静脈より経時的に採血した。血中濃度推移より求めたAUGを、今回考案した理論式に代入し、F9,Fh,Faを推測した.また、定常状態における肝抽出率や、門脈内投与と静脈内投与のAUC比より箱を求め、団の妥当性を検討した。(2)CyAを経口投与または静注し、経時的に門脈及び眼窩静脈より採血した。またケトコナゾール (KCZ)をラットに連投し、CyAを経口投与後に採血した。血中濃度はモノクローナル抗体(MA)あるいはポリクローナル抗体(PA)によるFPIA法で測定した。(3)CyAをラットに経口投与後、糞を2日間回収し、糞中CyA含量より吸収率を求めた。【結果・考察】 (1) 定常状態の抽出率測定実験より球めたCyAのFg,Fh,Faはそれぞれ100%,94%,19%と計算された。一方、門脈内投与の実験でもFhは94%となり、上の結果と一致した。これらのことより、新しい理論式の妥当性がFhについて示された。しかし、Fgについては、ヒトにおいてCyAは腸で代謝されるというBenetらの推定(1995年)と異なる結果となった。この理由について以下に検討を加えた。(2)CyAを5mg/kg経口投与後の門脈と末梢静脈の血中薬物濃度推移はほぼ同じであったが、鵬とPAとの間に顕著な差が認められた。一方、MAとPAの差(つまり主要代謝物)はCyA高用量(25mg/kg)投与時及びKCZ連投時には殆ど見られなかった。また、KCZはCyAを静脈内投与時の血中薬物濃度推移には影響を与えなかったが、経口投与時には吸収相の血中薬物濃度を有意に上昇させた。従って、CyAの腸代謝は用量依存性を示すこと、及びCYP3A阻害剤であるKCZで効率的に抑制されることが判った。一方、CyAを静注(0.1mg/kg) した場合、血中濃度は比較的低い(飽和濃度以下)にも関わらずMAとPAの差は認められなかった。以上の事実から、CyAの初回通過効果は肝臓ではなく主として腸によるもので、しかも吸収過程(つまり薬物が腸上皮細胞を透過する過程)においてのみ起こることが示された。つまり、結果(1)で求められたFgは経口投与時には適用できないことがわかった。(3)CyAのFa,Fh,Fはそれぞれ5mg/kgでは62%、67%及び15%、25mg/kgの時ではそれぞれ58%、94%及び28%となり、その結果Fgは36% (5mg/kg)、51%(25mg/kg)と計算された。従来よりCyAの生物学的利用率(F)の低さは吸収性の問題と考えられてきたが、本研究により、吸収性よりもむしろ腸代謝の寄与が大きいことを定量的に示すことができた。
|